両手に嘘を。3

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月日は流れて程なく、三年生たちは部活から引退をしていった


部活中の速水先輩と長瀬先輩のツーショットなんてろくに見ることもなく

どこかよそよそしい2人の姿だけが俺の中で印象的に見えてしまっていた





あの後、2人がどんな風に話合ったのかなんてよくは知らない


だけど、いいように転がったわけじゃないってことだけは

俺の目から見ても分かるぐらいだった




三年生が居なくなっても、部活動は以前と変わることはない


汗と泥にまみれて、男くさいヤツらが青春の全てを野球に注ぎ込んでいた




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夏が過ぎ、秋へと季節は移り変わっていく




いつもと同じ日常

いつもと同じ学校生活

いつもと同じ部活動

いつもと同じ────





そんな中で呼び出されたのは、俺にとってのひとつの変化だったのかも知れない





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ユニフォーム姿の顧問の松本と、その横にはジャージの速水先輩とが並んで立っていて

何だろう？と思いながらも二人の前に立ってぺこりと頭を下げた




松本「二宮、お前次の試合からメンバー入りさせようと思ってんだ。」

和也「……え？」

松本「今、速水とも話してたんだけどな？二年生を差し置いてだと、一年の二宮には荷が重いか……？」

和也「そ、そんなことないですっ！頑張ります、俺っ！」

松本「うん、やる気がなさそうに見えて、意外と頑張り屋だもんな？見てる奴は、ちゃんと見てるからな。」





松本は、励ますように俺の背中をポンと叩いて穏やかに笑う



そんな松本に嬉しくて、笑う口元が

どうにも抑えることが出来なかった




速水先輩は何も言わないけれど

一瞬だけ合った目がどこか照れくさくて

それを誤魔化すようにごしごしと両手で顔を擦った




見てる人は、ちゃんと見てる



信じなきゃ救ってくれない神様なんてハナっから信用なんてしてないけど

今は神様だっているんじゃないかってぐらいに

自分の舞い込んだ運に、両手を広げたいぐらいだった




着替えたユニフォームを乱暴にバッグに詰め込んで、誰もいなくなったグラウンドを後にする



すっかりと夕陽の落ちたグラウンドは、さっきまでの雑然とした賑わいさえも忘れさせるほど
シン…と静まり返っていた




和也「レギュラー……かぁ……。」




嬉しさも隠しきれずに鼻歌交じりに校舎の角を曲がる


するとそこには、さっきまで松本と話し込んでいた速水先輩が立っていて

見惚れる笑顔で、俺に笑いかけていた




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