両手に嘘を。3

106.もう少し、あと少し。 ページ14

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A「なーんだ……。」





繋がらなかったことを残念に思いながらも

繋がらなかったことにほっと胸を撫で下ろしてる





よく分からない自分の感情を閉じ込めるみたいに、スマホケースをパタンと閉じた





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きっと櫻井先生の電話番号を知ってるのなんて、クラスで私だけだ


それだけでも私はちょっとだけトクベツなんだって

持たなくてもいいような優越感で櫻井先生が電話に出なかった理由を、自分に納得させようとしていた





電話を繋げてドキドキした分

今、私の中にあるガッカリ感が大きい




もしかしたら時間が空いたら、掛け直してくるかも……なんて、変な期待ばかりが大きく膨らんでた



お風呂に入ってても着信が聞こえるように、脱衣所までスマホを持ち込んで

いつ電話がかかってきてもいいように、準備だけは万端すぎるほど




9時


10時


11時




時間が遅くなっていくほどその期待はどんどん薄れていって

期待しすぎている私に、どこか自分に呆れるような思いまで湧き上がってきた頃だった





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〜♪♪♪





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鳴り出したスマホの着信に、体中が心臓になったみたいに

ドクンって勢いよく鳴り響いた





駆け足を始めた心臓を押さえ込むように胸に手を当てて

深く息を吸い込む




画面には『櫻井先生』の文字が大きく浮かび上がってる




それを見ただけでどこか挙動不審になっている私がいて、私以外いるはずのない自分の部屋なのに

誰かに見られてるんじゃないかなんてキョロキョロと周りを確認してた





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指先が、スマホの画面をスライドする



繋がった着信に、これ以上ないぐらいの緊張感が高まって

心臓だけじゃなく、スマホを持つ指先だって震えてる





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