両手に嘘を。3

93.恋の意味 ページ1

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雅紀「お待たせ〜！かえろ？」





部活が終わるまで体育館で練習を眺めていた私に

ご機嫌な雅紀くんが大きなバッグをを抱えて駆け寄ってきていた




同級生の部員たちからは私たちの光景を見慣れていても

ふざけるように「ひゅーひゅー。」って冷やかしの声が飛んできていた





そんなことには慣れた様子で雅紀くんも冷やかしに手を振って

見せつけるかのように私の手を握って、体育館の渡り廊下を歩き始めた





A「雅紀くん……恥ずかしから……っ//」

雅紀「いいじゃん、別に(笑)」





雅紀くんは周りの生徒の目なんて気にすることもなく、私の手を引く




鼻歌混じりなのは、始終ご機嫌な証拠

朝、雅紀くんの見せた顔は夢だったんじゃないかって錯覚させるほどだった





雅紀「週末、楽しみだなぁ♪」

A「頑張ってね。絶対に見にいくから。」

雅紀「うん(笑)」





鮮やかに笑いながら振り返った雅紀くんに、ドキンって心臓が大きく打ちつけた




ほら

こんなにも無邪気に笑う雅紀くんの一面を見せるから

私の心もその度に奪われて、ドキドキって鳴り続けてる




過ぎた時間は雅紀くんに一瞬でも抱いた恐怖心を忘れさせて

ヤキモチなんて妬いてくれる雅紀くんを嬉しいとさえ思ってしまえてるんだから





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痩せているのに、大きく見えるTシャツの背中を追いかけてた




ぎゅうって握られた手が何だか切なく感じて

今朝の雅紀くんを少しでも怖いと思ってしまった自分が、今は不思議で仕方なかった





付き合い始めてからずっと、こんな風に雅紀くんは私の前を歩いてて

ずっと私を好きだと言ってくれて

これが私の幸せなんだって、そんな風に思ってた





誰かに想われることと

その人を想うことが一番の幸せなんだって、そう思ってた




きっと、学生の恋なんて誰も深い場所まで考えてなくて

ヤキモチを妬かれることなんて考えてもいなくて

だから急にヤキモチをぶつけてきた雅紀くんに、ちょっとだけ戸惑っただけだなんだ




そう思うことにしよう



そうじゃなきゃ、今まで付き合ってきた一年間は

雅紀くんを何も見てきていなかったみたいで、私が悲しくなりそうだからだ





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握られた手は今も緊張感から汗ばんできていて、少し恥ずかしい




だけど、それを離しちゃダメだ



離したら────私が傷つく気がしてならなかったからだ




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