不器用な優しさ 弐【高杉晋助】

３１大切なもの ページ7

【Asaid】




「……」




目を開けると見慣れない部屋



鼻につく煙草の匂い







――晋助






「目ェ覚めたか」





まだぼんやりとしながらも浮かんだ顔






「え？…あぁ」





覚めきらない頭を覚醒させて状況を理解する






「A、お前が寝ている間に来島に傷の手当てをさせた」







そう言われ弾が掠めた腕に包帯が巻かれているのに気付く




着物も変わっていた






「腕の傷のほかに腹にも大きな傷があったと聞いてなァ」






無言で続く言葉を待った






「その傷とお前がここに来たことは関係があるのか」






「そうね。簪を返してもらいたくて」






「簪？…まだ持っていたのか」









あの簪は十年前、彼からの最初の贈り物









「大切なものだから」









「…そうか」









「足出せ。外してやる」








というのは左の足首についている枷





その言葉通り外れた枷が転がる









本来なら牢の中でもおかしくないところなのだが




足枷まで外すというのは如何なものか…






「いいの？」






「俺ァ別にお前を縛っておきてェ訳じゃねよ」







さらに「少し赤くなっちまってるな…大丈夫か？」と続けた









「そろそろ行く」






「まだ休んどけ」







髪を撫でて部屋を出て行った






髪を撫でるのは私を甘やかす時によくしていたことだ







「もう子供じゃないんだけどなー」







一人の部屋で小さくつぶやく

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