不器用な優しさ【高杉晋助】

１８月光 ページ28

【Asaid】



晋助と銀時を残し、彼の起こした暴動を見ていた


まぁ高みの見物というものか


彼に肩入れしているわけではない


何せ私は幕府を転覆したいわけではない


だが、守りたいわけでもない



もし私がどちらかにつくことになるならばこの状況も

何かしら変わるのだろうか



どうなろうと一先ず今は基本的ノータッチを決め込んでいる




一通り片付いたのを確認してから帰路についた


ぼんやりと今では慣れた道をただただ歩く


すると突然に射してきた月光を浴びるように月夜を見上げる男がいた



女物を思わせるは派手な着こなしは遠くからでもすぐに分かる



わざとらしく狐の面で顔を隠し彼に近づいた



おそらく先程接触した時には私だとは気付いていない



彼の目の前で面を側面にずらし、一瞬目が合ったような気がした


もちろん声をかけるなんてことはしない


無言を通し、そのまますれ違う……はずだったのだが



ポン…と髪を撫でるように乗せられた手






「いい女になったじゃねェか、A」






そんな彼の一言とともに



「……」


気付かれたことさえ予想外


それなのに声をかけられるなんて…


呆気にとられている間に彼は私とは反対の方角へ歩きだした





「……次の橋に二人」




私が元来た道だ


この先の橋付近に真撰組の隊服を着た役人が二人



「……」


この橋を渡りきったところを左折すれば港にも近い


さらにその先の小さな抜け道を通れば警察組織の目には止まらない



ここに来てからの二年間で知った地形


できることなら全てを伝えて逃げてほしい

無事でいてほしい


というのが本心


しかし、時間が経てば見つかる確率は高くなる


そう考えてシンプルな一言に留めた









「A、＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿。」






会話とは言えないかもしれないが、

十年越しの不器用な言葉だ

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