【wrwrd！】彼女と彼女と僕【大先生】 (ページ5)

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彼女らは同棲こそしていなかったものの彼はこのアパートから自転車で20分程の所に住んでいた。デート時に彼女をアパートまで送るのは割と彼の日課だった。この日は繁華街へ出向いたため、帰りはもちろん電車だった。
｢人多いね……｣
電車は音を立てながら進み、揺れているがそれを感じさせないほど中は混雑していた。
｢ちゃんと俺につかまっといてや｣
｢……うん｣
彼女は彼の服の裾をきゅっと掴んだ。
ガタンゴトンという音につり革が揺れる。車内はカップルばかりがいた。彼女らもそのうちの1組で恥ずかしがるような雰囲気はなく、落ちついていた。
アナウンスとともに流れ出す客。ここの駅は住宅街が多い。彼女の最寄り駅はそこの駅から2駅ほど離れたところだった。
そしてパッと手を離して話しかける。
｢一気に人減ったね｣
｢ほんまやなあ、僕もあんなとこ住みたいわ｣
彼の一人称が安定しないのはいつものことだ。真面目というかかっこつけているときは[俺]で、普段は[僕]。彼女はその癖を、大学で出会った頃から知っている。さらには、浮気をする度に[俺]になっていちいち言い訳をすることも。
しかし、そのちょっとした変化に意識させられる自分がいることも否定出来ない彼女。
｢ん？なに顔赤くしてん｣
｢あ、赤くなんかしてない！｣
｢んー？｣
彼女の頬に手を添える彼。恋人としてはもう1年の付き合いになるがこういうスキンシップには反応してしまう。
｢ちょっと大先生！もう着いた！｣
｢お、おうほんまや。降りるかあ｣
彼女はタイミングよく駅に着いてくれた電車に心の中でお礼を言った。
駅を出るとそこからはいつもの道。暗い歩道の脇にあるチカチカと光るライトの横を通っていく。
｢歩き疲れちゃった｣
いつもより少し遠出したからかその分楽しさはあったが疲労も出てきた頃だ。
｢お姫様抱っこしたろか？｣
｢い、いらない！｣
｢恥ずいん？｣
｢当たり前でしょ？｣
ぷい、とそっぽ向いた時に背中に重みと首に暖かさを感じた。
それは彼が後ろから抱きついたからだった。
｢え……もう……｣
｢ちょっとだけ｣
彼女は少し恥ずかしそうにしながら彼の腕に手を添えた。
｢ん〜！もう終わり！あとは家！｣
｢え、家上がっていいん！｣
｢う、あ、やかましくしないなら？｣
｢優しくするわ｣
｢いや、そういうことじゃない！｣
そんなやり取りをしていると早くも彼女のアパートに着いた。