【あんスタ短編集】夕焼けの偶像【Valkyrie】 (ページ20)

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キスをしないと出られない楽屋（３）ページ20

先輩に抱きしめられていた。
「…別に嫌だとは言ってないだろう。ただ、A、君とのキスは雰囲気を大事にしたかったのだよ。君がしたいかも分からなかったからね。でもそれが君を不安にさせてしまったようだね。」照れ臭そうに、けれど優しく先輩は呟いた。
先輩がそんなこと考えていたなんて、先走って悪いことばかり考えていた自分が恥ずかしい。同時に嬉しかった。

「その発言を聞く限りだと、心の準備はできているようだね？」
「は、はい…！」

先輩は私を抱きしめていた身体を少し離した。お互いの目が合う。恥ずかしくて目を逸らすと「こっちを見たまえ」と顔を強制的に先輩のほうに向かせられる。先輩の顔が近づいてくる。先輩まであと１０ｃｍ、５ｃｍ、４ｃｍ、３ｃｍ、２ｃｍ、１ｃｍ・・・

チュッ、とまるでそんなリップ音が鳴るようなキスを交わした。
その瞬間、ガチャンと音を立てて扉の鍵が開く音が後ろのほうで鳴った。

「またせたね、今日だけは特別にどんな要望にも応えよう、さあ！どんどん言いたまえ！」
スタジオに戻った先輩は上機嫌で言い放った。
「…なんか斎宮宗さっきと違ってテンション高くない？」
「さっきの休憩時間になんかいいことでもあったんじゃない？」
「まぁ撮影進められるし、やりやすいからなんでもいいんだけど…」
さっきとはうって変わって上機嫌な先輩に、スタッフは困惑しつつも撮影は進められていくのであった。