拾 ページ12
「ん?東卍の幹部、千堂敦…アッくんじゃん!!」
ナオトの部屋には、アッくんの写真が貼ってあった。
「アッくん?タケミチくんの友達の?おかしいですね…彼なら16のときに、東卍の清水将貴という男を刺して捕まり出所後は末端のチンピラだったはずです」
「もしかして」
考えられるのはひとつしかない。
「「過去を変えたから!?」」
俺たちは、アッくんに連絡を取り、マイキーくんに繋いでもらうことにした。
・
アッくんはなんと夜の店のオーナーになっていた。
腕は刺青で埋め尽くされていて、あのころの面影はない。
だけど中身は昔のままで、屋上で2人きりでたくさんの思い出話に花を咲かせた。
「すげーよなぁアッくんは!こんなでっけーキャバのオーナーで東卍の幹部だろ?いい車乗っていい服着ていい女抱いてさ、オレとは別世界なんだろうなぁ、羨ましいなぁ」
「金で手に入るもんなんてたかが知れてるさ」
「くぅぅうー!言ってみてぇー!!」
「一緒にいたやつ、警察だろ?」
その言葉に、オレは肩をびくりと揺らしてしまう。
「いーよ、隠さなくて。弟がいたなんて知らなかったなぁ…橘日向の弟だろ?」
「なんで…そんなこと知ってんだ?」
「東京卍會ってのはそういう組織だ」
その言葉に生唾を呑む。
「なぁ、覚えてるか?中2の夏、オマエがキヨマサくんに逆らった日。皆が帰った後、オマエがオレにこう言ったんだ。"みんなバラバラになって大人になって出会ったらどんな話をするのかな?"って…」
「ああ!覚えてるよ!」
「こんな話はどうかな…」
アッくんはそう言うと俺に向き直った。
「オマエを線路に突き落としたのは、オレだ」
その言葉に、喉が一瞬で渇くのがわかった。
「確実に殺したはずだった。でも助けた奴がいた。橘直人だ !あの時、橘直人はオマエが線路に落ちることを知っているように見えた」
オレは、目を見開いたまま言葉を失ってしまう。
「変な事言うけどさ、タケミチオマエ…過去に戻れるんじゃないのか?そして過去の橘直人に助けを求めた」
「なに…言って…」
突然アッくんはオレの肩を掴んだ。
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作者名:まゆげない | 作成日時:2022年4月26日 1時