壱 ページ3
2005年7月4日。
渋谷。
「ちょっとA！もう呑むの辞めなって！」
「ん"〜……きもちわるい……」
20歳。気がついたらそんな歳になっていた。
「今日大学もサボったんでしょ！？留年しても知らないからね」
さっきから私に怒っているのは、佐野エマだ。
「つーか、中学生が居酒屋入って来ちゃダメでしょ〜。子供は帰りな」
エマからチューハイのグラスを奪い返しながらそう言うと、エマは呆れたようにため息をついて私の向かいに座った。
「……エマ、帰ってて…またマイキーとドラケンに怒られるから」
ふわふわとした頭のままそう言うと、エマは私の前に水を置いた。
「昼間から呑んで、2人に怒られるってわかってるんだったらやめたらいいのに」
少し悲しそうな顔でそう言うエマに、少し罪悪感が湧く。
「……わかった、帰るよ」
フラフラとした足取りのまま立ち上がると、エマが慌てたように私を支えてくれる。
会計を済ませて店を出ると、もう夕方くらいだった。
「ごめ、エマ……ちょっと寄るところあるから、また今度ね」
「1人で帰れる？」
「たぶん……」
私はエマから離れて一人で歩き出す。
騒がしい渋谷も、酔っていたらさほど気にならない。
「…………」
真一郎が死んで2年。
私は、未だに前に進めずにいた。
「………ッう…！」
やばい！吐きそう……
本格的に感じた吐き気に、私は慌てて近くの公園に駆け込んだ。
「オエッ………」
トイレで胃の中の物を吐き出す。
吐いたらだんだん酔いもさめてきて、ふらふらもしなくなった。
「マジ、最悪……」
口をゆすいでトイレから出ると、何だか騒がしかった。
人が殴られる音。呻き声。
喧嘩……？
私の予想は当たっていて、そこでは中学生の喧嘩が行われていた。
正確に言うと、一方的になぐられてるって感じだ。
何人いるんだろ。そんなに多くなさそうだけど……
ていうか、私が公園から出れないからやめて欲しいんだけど。
そう思っているとどうやら終わったようでリーゼント2人が土下座をしていた。
その2人の仲間と思われる残りの3人は、ぼろぼろで倒れている。
うわ……
喧嘩は見なれている方だけど、やっぱり痛々しい。
「オマエら今日からオレら"東京卍會"の兵隊な。しっかり働けよ」
東京卍會って、万次郎の所の……
私はそう言い残して去っていった東京卍會の人達を見つめる。
あれって、渋谷三中だよね……？怖い怖い。
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作者名：まゆげない | 作成日時：2022年4月26日 1時
