かけがえのある世界。【灼熱カバディ】 (ページ50)

今日:13 hit、昨日:3 hit、合計:12,184 hit

49. ページ50

〈Aside〉

六弦は立ち上がる。

「どんな強者も時間には勝てん。能京も前半終了のタイミングで奏和の全滅を狙っただろう。時間の使い方を、参考にさせてもらったぞ」

「………っ」

見てるだけは、やっぱりもどかしいな…

そう思いながらぎゅっとタオルを握りしめる。

「こっからだったんだ…高谷も六弦も倒して……いつだ…」

宵越くんはそう呟く。

「え？」

王城が聞き返す。

「大会はいつだ？」

「………」

「宵越くん…」

「大会は8月だ」

「8月…3ヶ月後か…」

「僕たち三年はそれが最後の大会だ。もう負ける訳にはいかない。這い上がろう」

"最後"。

そうだ。もうそんなに経ったんだ…

「32対31！！！勝者、奏和！！礼！！ありがとうございました！！！」

__________

______

____

「六弦、今日はありがとう」

私は六弦と握手を交わす。

「ああ。また大会でな」

私の手を離すと、六弦は井浦に握手を求める。

「…握手の相手間違ってねーか？」

「違えてなどいない。…強敵よ」

六弦は、至って真剣な表情だ。

「こんな力があるとは思っていなかった。名を教えてくれ」

「……」

これ、無自覚でやってるからタチ悪いよね。

私は思わず苦笑いしてしまう。

「『オージョーノユージン』だよ。クク…しっかり覚えとけ」

井浦は皮肉たっぷりにそう言った。

「えっ…それ名前じゃ…」

すると王城が井浦の後ろにまわった。

「俺の名前は井浦慶よろしくー」

「なにしてんだテメー！！」

井浦が王城の胸ぐらを掴んで揺さぶる。

「井浦慶はテレ屋なんだー」

仲のいい2人の姿に私は思わず笑ってしまう。

「比羅川さん」

後ろからそう声をかけられて私は振り返る。

そこには高谷煉が立っていた。

「…高谷煉」

「そんな目で見ないでくださいよー。ほら、握手しましょう！」

高谷煉はそう言って手を差し出してくる。

「………お前の挑発的な態度はムカつくけど…カバディ、上手いんだね。それはすごいなって思った」

私はそう言いながら高谷煉の手をペシッと軽く叩く。

そう言うと高谷煉は「ふーん」と言いながら顔を近づけてきた。

ﾄﾞｷｯ

な、何…！？

「握手したくない相手にでも、ドキドキするんですね」

高谷煉は笑いながらそう言った。

「っ……！」

からかわれたんだ…！

「～～～っ…やっぱり、あなたとは仲良くなれなさそう」

そう言うと高谷煉はまた笑った。