かけがえのある世界。【灼熱カバディ】 (ページ47)

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「チッ…」

高谷煉は宵越くんの方へ手を伸ばす。

「カバディ！！」

でも、宵越くんは高谷煉の伸ばした腕を上手くかわす。

「帰すかよ」

だがそれは、鎖(チェーン)の為だった。

宵越くんは鎖で抑えられてしまう。

「ナイス栄ちゃん！！」

「カバディ…！！」

「六弦さんトドメ！！」

その声に六弦は宵越くんへと向かう。

「任せろ！！」

だが、宵越くんは六弦が来る前に相手の腕を軸にし、バネのように跳ね上がり、鎖(チェーン)から抜け出した。

「「「！！！！」」」

「チッ…」

高谷煉は直ぐに宵越くんを追いかける。

「カバディ！！」

あと少し…！

「カバディ…！！」

しかし、高谷煉は直ぐに追い付き、宵越くんの腰を掴んだ。

「カバディッ！」

宵越くんの身体は完璧に浮いてしまう。

「カバディ…」

だけど、宵越くんは掴まれた状態で体を回した。

「カバディ…！！」

そして、宵越くんはコートに手を伸ばす。

彼はコートの外から自陣へ帰った。

高谷煉がやったのと、同じように。

2人はそのまま床に崩れる。

「…よう。初心者なりに学ばせてもらったぜ」

宵越くんは身体を起こしてそう言った。

「…高谷はキッチリ追い出した。勝つぞ先輩」

それに王城と井浦は親指を立てて、

「「ああ」」

と、応えた。

「能京2点獲得ー！！！」

「にっ…2点差…！！」

残り時間52秒。

ターンで言えば奏和の攻撃1回、能京の攻撃1回で終わる時間。

この試合、もう高谷煉の攻撃はほぼ無い事を意味していた。

2点差を追う能京は次の攻撃手を早めに倒し、すぐさま最後の攻撃へ向かう構え。

対する奏和、攻撃の要,高谷煉を欠いた状態。

選択肢は時間潰す事。

もしくは…

「…点差を広げに来るか。そうだよな。宵越が高谷をタッチした時…みんながアワくって止めに来てる中で…」

私はかつての仲間をじっと見る。

―――「お前だけは、生き残る事を選択した」

六弦……！

「勝利のためだ。行くぞ…能京！！！」

何としても、六弦を止めないと。