かけがえのある世界。【灼熱カバディ】 (ページ41)

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「時計止めてください！」

「ん？」

審判の人がそう言うと同時に時計が止まる。

「能京5番の方、選手交代お願いします！！」

「え…あ！？」

私は畦道くんの方を見る。

すると、まだ完全には塞がっていなかった傷跡が先の衝撃で開いたのか、畦道くんの頭からはドッと血が流れていた。

怪我……！

サッと血の気が引いていくのがわかる。

すぐに止血しないと…早く交代を…

「へ…平気っす！まだやれます！！」

「いや、ダメです！！マネージャーさん！！医務室へ！！顧問の先生も！！」

「す…すぐ止まんべこんなん！！おらまだ…」

「相馬」

王城の冷静な声が、やけに体育館に響く。

「怪我は敗北と同じくらい怖いものだ。ちゃんと治療してくる事」

私は、タオルを畦道くんに持っていく。

「審判。タイムアウト。交代します」

「メンバーチェンジ能京！！」

それにより、周りがザワつく。

「畦道くん、これで押さえて」

畦道くんは私からタオルを受け取ると、言われた通りに傷口を押さえた。

「畦道…」

「……」

「平気っす！！練習の傷開いただけなんで！！」

畦道くんは皆を心配させぬよう笑顔でそう言った。

けど、悔しさが手に取るようにわかる。

まだ、活躍出来ていないのに下げられるのは、悔しいことだ。

だけど怪我は本当に危険なものだと、身をもって知っているからこそ、出す訳にはいかない。

私は畦道くんの所へ走っていく。

王城が、出るんだよね…

王城の方を見ると、ばちっと目が合う。

王城は「まかせて」と言うふうに笑った。

その表情に私も思わず気が抜けて笑ってしまう。