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「カバディ…」
宵越くんは今度こそ王城を見失わないようにしっかりと見ている。
低い姿勢ひ攻めるとも逃げるともとれる重心。
淀みなく読みづらい基本に忠実なキャント。
そして、恐らく私と宵越くんと畦道くんを目の端に置いているであろう不明瞭な視線。
ここで宵越くんはあることに気づいたみたいだ。
それは結局のところ何1つ分からないということだ。
「!うっ!?」
私達の正面にいたはずの王城は気が付いた時には横にいて、宵越くんをタッチしようとしていた。
宵越くんはそれをギリギリ避ける。
避けた宵越くんは後ろに下がる。が、王城は宵越くんを深追いする。
後ろから畦道くんが王城を捕まえようとする。
王城はそれを読んでいたのであろう。さっと避ける。
「カバディ……」
確かに今のは死角だけど、王城には通じない。
宵越くんはジャージのファスナーを落らし、バッと脱いだ。
「…スピード速さだけじゃないな。「来ない」と思ったら来て…「来る」と思ったら来ない…お前の特技は『フェイント』か?」
「カバディ!!カバディ!!」
王城はキャント中なんだけどと言う代わりに口元を指でさす。
「キャント止めていい。すでに1回仕切り直してるし、次が本番で」
体育館内がシン…とする。
「…勝負の最中に質問とは面白いね。…でも惜しい…僕の技は『フェイント』より少し野蛮だ。これ以上はまだ教えない」
「ケチくせーな…じゃあ別の質問いいか?」
王城は「ん」と声を漏らす。
「お前を止められたら、俺は強いと言えるか?」
「……!」
私は宵越くんの方を見る。
「…―――――――うん。間違いなく」
ブワッ!!!!!
全身が一気に奮い立つ。
ああ、ダメだ。高揚感が、止まらない。
あの頃の、1番をめざしていた頃の―――――
「…じゃあ今度こそラストな!!」
「うす!!」
王城はキャントをしながらユラ…と近づいくる。
「カバディ…」
刹那、宵越くんは王城の様にぬる…と王城の後ろに回った。
え……
「カバ…ディ…」
この場にいる全員が目を見開き口を大きく開けて驚いた。
私も思わず動きを止めてしまう。
「ん?」
宵越くんは、我に返ったように王城を捕まえに行く。
「カバディ!!」
「くそ!!逃がした!!」
「ヨ…ヨイゴシ今何したんだ!?」
畦道くんが動揺したように聞く。
「わ…わからん!!ボーッとしてた!!」
は…?ぼーっとしてた?
無意識ってこと…?
ふざけるなよ。何それ…
「比羅川…?」
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作者名:神崎 奏 | 作成日時:2021年7月23日 13時