【イナオリ】元強化委員監視係は世界で戦う〈5〉 (ページ15)

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第214話ページ15

「フランスチームの食中毒。仕組んだのは、あの人なんじゃないですか？」

私と光は、フロイとベルナルドさんを交互に見る。

オリオンには、別に黒幕がいるってこと？

「兄さん、お願いです。真実を話してください」

「真実か……フッ」

ベルナルドさんはそう呟くと、サッカーボールを思い切り蹴った。

そのボールはものすごい勢いで私と光の顔の間を通り抜けて、フロイの腕により受け止められる。

「とりあえず教えておこう。次に日本と戦うブラジルチームは全員がオリオンの使徒であり、私の直属の精鋭たちだ」

そんな……

「だか約束しよう。私は試合中以外日本の選手に一切手を出さない。一星くん、Aさん、君たちが私のやり方に異議を唱えるというならブラジルを力でねじ伏せてみせろ」

ｿﾞｸｯ

鋭い視線で私たちを睨むベルナルドさんに、私は思わず息を呑む。

「オリオンの下で高き志を抱くものを、君たちが阻止できるのかどうか、注目している」

ベルナルドさんはそれだけ言うと今度こそ部屋を出ていってしまった。

「………っ…」

私たちはオリオン財団の本部を出て、帰り道を歩く。

フロイも光も、一言も話さない。

だけど、少しして光が立ち止まる。

私もつられて立ち止まってしまう。

「フロイ。一体何者なんだ？フランスチームの食中毒を仕組んだ、本当の黒幕は」

光の質問に、フロイは軽く息を吐く。

「君には目星がついてるんだろう？」

「一応ね。少し時間をくれないか？」

フロイはもう一度私たちを見てそう言う。

「1人で調べるつもり？」

まさかと思いそう聞くと、フロイはその目を細めた。

「君たちに、余計な心配をかけたくないんだ」

「どういう意味？」

「その時が来たら話すよ」

フロイの真剣な瞳に光はフッと笑う。

「わかった。気をつけろよ」

光はそう言うと歩きだす。

「またね、フロイ。勝手に着いてきてごめんね」

「構わないよ。またね」

フロイはそう言うと私の左手をすくい上げ、指先にそっとキスを落とした。

「っ！！――――っ…今回だけだよ」

私は手を引っ込めてフロイにそう言う。

そして、光の後を小走りで追いかける。

「光！走るよ！会長、怒ると怖いんだから」

光に向けてそう言うと、光は苦笑いして「はい…」と返事をする。

「怒られる時は一緒だね」

笑いながらそう言うと光は何故か。嬉しそうに目を細めて「はい」と言って笑った。