第77話 ページ28
「ねぇ、野坂くん……もう黙って」
思わずそう言ってしまう。
野坂くんは口を噤んで私を見つめる。
「そんな事実はないよ。先輩に対して、失礼だと思って」
すこし野坂くんを睨みながらそう言う。
そこまで予想してるなら、もう詮索しないでほしい。
お願いだから、今だけは放っておいて。
「ごめんね。野坂くんの目に私が疑わしく見えてたなら、謝るよ。でも、ほんとにそんな事ないから！」
そう言って上がりにくくなった口角を無理やりあげる。
「Aさん……」
「まだ、信じてくれない？」
〈野坂side〉
僕の目を見つめてそう言うAさんの目は泣きそうなくらい潤んでいて、無理やりあげたんであろう口角はぴくぴく震えている。
そんな辛そうな笑顔が見たくて、聞きたかったわけじゃないのにな……
多分、本当に何かあったんだろうけど、これ以上問い詰めてもAさんは口を割らないだろう。
「わかりました。すみませんでした。勘違いだったみたいです」
諦めてそう言うと、Aさんは安心したように肩の力をぬく。
この行動も、さっきの表情も本人はやってることを気づいていないんだと思う。
Aさんは2人きりで問い詰めたら、必ずボロが出る。
「私こそ、ごめんね。ちょっとムキになっちゃった」
目の前で笑いながらそう言うAさんは、いつも通りだった。
「今日はもう遅いし、野坂くん部屋に戻りなよ！西蔭くん、心配してるんじゃない？」
「そうですね。じゃあ僕も、これで」
僕はそう言ってAさんの部屋を出る。
僕の予想が合っているなら、Aさんを早く助け出さないとまずい。
一星くんのように、自分を悪人と思うことになったら、Aさんの精神は崩壊してしまう。
早めに手を打たないと。
〈Aside〉
▼
「わぁ〜！ほんとに私の記事が載ってる！」
私たちは食堂で月刊ワールドサッカーを見る。
イナズマジャパンとマネージャーと監督たちの分、つまり全員分の月刊ワールドサッカーが紀村さんから送られてきたのだ。
みんな朝ごはんを食べながらや、固まりながら見たりしている。
私は自分の記事に目を通す。
"フィールドの女神は恋愛には疎い！！"
自分のページの見出しには大きくそう書いてあった。
何これ！！
「お〜ま〜え〜は〜！！」
私が驚いていると、ヒロトが殺気を放ちながら私の方に来る。
「何だよこの抱きつきたくなる人ランキングって！」
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神崎 奏(プロフ) - みかんさん» ありがとうございます！めちゃめちゃうれしいです！！ (2020年4月13日 17時) (
レス) id: 2b665a7700 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - とっても面白いです♪ (2020年4月13日 14時) (レス) id: b227610430 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：神崎 奏 | 作成日時：2020年4月3日 18時
