第65話 ページ16
「それでも、俺が誰かを傷つけようとしたことには…」
「僕のことは守ってくれたじゃないか」
「俺にはできなかった。サッカーで命を奪うなんて！」
それって、私が来た瞬間のあれの事だよね……？
「安心して。僕の頭が危険だという話は、君を惑わすための嘘だから」
え…………
「僕の体に何も問題はないから」
私は野坂くんのほうを見る。
「嘘なの！？」
私たちは野坂くんに何から何まで騙されていたらしい。
「一星、何やってんだよ！」
そこへ明日人が叱咤する。
「お前は悪い奴じゃない。プレーを見れば分かる。どうして俺たちに何も話してくれないんだ？」
するとヒロトが一星くんに言った。
「お前の弟の手術代、俺が親父に頼んで借りてやるよ」
あ、そういえばヒロトって吉良財閥の御曹子だ……
「そんな金、俺には返すあても…」
「お前は今のサッカービジネスの大きさを知らないのか？」
「ヒロトの言う通りだ。もし俺たちが世界大会で優勝すれば、大会スポンサーから賞金が出る」
タツヤがヒロトの言葉に続けるようにそう言う。
「それで手術代は余裕で返せるはずだ。それに、俺たちなら絶対優勝出来る………そう思わねえか？」
自信満々なヒロトの表情は頼もしくて、何だかかっこよく見えた。
「待ってくれないか、ヒロトくん」
そこへ野坂くんが待ったをかけた。
「その必要はあるのかな？そもそも一星くんは、誰を助けようとしているのかな」
「誰をって…」
弟をでしょ？
「ここから先は私が説明しましょう」
監督がそう言って一星くんの隣に座る。
「私は鬼道くんと連絡を取りあって怪しい怪しい一星くんの素性を調べあげました！」
おおー。さすが監督！やる時はやる！
「鬼道くんは、岩戸くんが文通していたという手紙から、一星くんの弟が入院しているとされる病院を突き止めたのですが、病室に光くんの姿はなく、結局その日一日帰ってこなかったそうです」
その話を聞いて一星くんは動揺する。
「そんなはずはない！光は、光は今もあの病院に…」
「まさか、弟がいるってのも嘘なのか？」
「いや、彼にかつて兄弟がいたことに間違いは無いよ」
「かつて？」
野坂くんのかつてと言う言葉に私は首を傾げる。
「うああぁ！」
すると一星くんは急に頭を押さえ、苦しみ出した。
「に、兄ちゃん…」
そして、弱々しくそう呟いたのだ。
「こ、怖いよ！兄ちゃん！ここは、どこ？この人たち、一体何を言ってるの？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 55人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
神崎 奏(プロフ) - みかんさん» ありがとうございます！めちゃめちゃうれしいです！！ (2020年4月13日 17時) (
レス) id: 2b665a7700 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - とっても面白いです♪ (2020年4月13日 14時) (レス) id: b227610430 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：神崎 奏 | 作成日時：2020年4月3日 18時
