19 スタッフ ページ19
『…おはようございます…』
どぎまぎしながらドアを開ける。
今日はいつもの稽古場じゃない。
全く知らない、初めての場所。
ドキドキしすぎて、早く来てしまった。
ここで、合ってるよね…？
「おはよう！あなた見ない顔ね、どこのスタッフ？」
『え、？ス、スタジオに行ってくれって…』
「あぁ！そっちね！じゃあこれ、持っていってくれる？」
『あ、はい！』
はきはきしゃべる、女のスタッフさん。
大きな段ボールを渡されてしまった。
これを持ってスタジオに行けばいいのかな…。
『おはようございます、これはどちらに…？』
スタジオのスタッフさんに声をかけると、ありがとうと受け取ってくれた。
「そこの子、これお願いね」
『あ、はい』
今度はお洋服。
ステキなのがたくさん。
そういえば私、撮影前に衣装にお着替えと、メイクするって言われてたな…。
「あ、ついでにこれも！」
『はいっ』
パタパタと色々なところを行き来する。
スタッフさんたちって、忙しいんだな…。
「あれ！？Aっ！？」
『はいっ！』
名前を呼ばれた方に勢いよく返事をしてしまった。
スタッフさんのバタバタに釣られてしまった。
「こんなところでなにやってんの』
声をかけてくれたのは荒木さん。
こてん、と私は首を傾げた。
『お手伝い？ですかね』
「メイク遅れるよ」
「ち、ちょっと待って！？」
荒木さんと話していたところに、近くにいたスタッフさんが間に入る。
一番最初に、私にダンボールを渡したひと。
「あなた、が、Aさん！？」
綺麗にアイラインが引かれた目が、大きく見開かれる。
『あ、はいっ、。はじめまして、Aと申します』
深々と頭を下げた。
このような現場は初めてだから。
「ごめんなさいっ、私、てっきり新人スタッフかと…っ！」
あ、なるほど。
だから私、段ボール渡されたのか。
「ほんっとうにごめんなさいっ！大変失礼なことを…っ！」
『あ、気にしないでください。準備が大変だってこと、とってもよく分かりましたし、少しでも力になれていたなら、嬉しいです』
しゅん、と女性スタッフさんは項垂れてしまった。
私、有名俳優とかじゃないし、スタッフに見えるのも仕方ない。
早く来たのも悪いし。
「お詫びと言ってはなんですけど…今日の撮影、すっごくステキに仕上げます！」
『ぜひ、よろしくお願いします』
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作者名：さくらまる。 | 作成日時：2022年10月3日 21時
