『お話中だったようなので、終わるまで待っていただけですよ』 ページ25
息を詰めて固まっている私の耳に、
意外そうな、不満そうな女子生徒達の声が届く。
「え!?彼女いたのー!?」
「うっそ、ショックなんだけど」
「いつから付き合ってんの?春休み前はいないって言ってたじゃん」
「人の個人情報勝手にバラすわけねぇだろ。ほら、分かったら帰れっての」
その言葉の後、教室の前のドアが開いた。
各々不満を零しながら、私と反対方向へと歩いて行く。
にしても、宇髄先生に彼女がいるなんて知らなかった。
お嫁さん達との関係を聞いた時も、そんな話は一切されなかったはずだ。
でも、宇髄先生なら彼女の一人や二人いたところでおかしくない。
いや、二人いるのは問題なのだが。
「何してんだ、そんなとこで」
もんもんと考えていると、急に背後のドアがガラッと開いた。
振り返ると、宇髄先生が首を傾げながら私を見下ろしている。
『お話中だったようなので、終わるまで待っていただけですよ』
「あんなモンお話じゃねぇよ。取り敢えず、もう終わったから入って来い。
弁当まだ食ってないんだろ?一緒に食おうぜ」
そう言って、宇髄先生は中へと入って行った。
私も後を追い、二人で美術準備室へと足を踏み入れる。
美術準備室に入るのは初めてだが、誰がどう見ても準備室には見えない。
画材や宇髄先生が書いたのであろう絵もあるのだが、
それ以上に冷蔵庫やソファーなどの日常品が目立ち、どう考えても宇髄先生の私室と化している。
やはり教師をしていても天元様は天元様だったと呆れながら、
「ここ座れ」と自分の隣を叩く宇髄先生に従い、私はソファーに腰を下ろした。
二人揃って、中身がほぼ同じのお弁当を開ける。
「一人暮らしだった時はコンビニ弁当ばっかだったから、
Aが弁当作ってくれてスゲー助かるわ」
『...そうですか』
「どうした?何か顔暗いぞ」
『いえ、何でもないです』
ごまかしてプチトマトを頬張りながらも、考えるのは例の彼女の件ばかり。
聞きたいけれど、私なんかが踏み込んでもいいのだろうか。
...いや、やめよう。考えるだけ無駄だ。
宇髄先生に彼女がいるのは事実なのだから。
私はそう無理矢理割り切り、その話題を頭から振り払った。
『大丈夫ですよ、お仕事お疲れ様です』→←『ごめん、今日は一緒に食べられなさそう』
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桜餅(プロフ) - みたらしさん» ありがとうございます!明日は部活休みなので、続編の方も多めに更新出来るよう頑張ります! (2020年7月6日 23時) (レス) id: 03f4026521 (このIDを非表示/違反報告)
ハル時々はるる(プロフ) - わぁぁぁ続編楽しみに待ってます!私も部活やらおまけに受験もあって忙しいですがお互い頑張りましょう!応援してます!! (2020年7月5日 0時) (レス) id: 1867b93bcb (このIDを非表示/違反報告)
みたらし - 続編楽しみです!部活とか大変だと思いますけど応援してますね〜 (2020年7月4日 22時) (レス) id: 2fd201009b (このIDを非表示/違反報告)
桜餅(プロフ) - ぽんちゃんさん» 大丈夫...だと思いますw夢主さんも宇髄さんも気配とか音で分かりそうなので! (2020年6月29日 19時) (レス) id: 03f4026521 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんちゃん(プロフ) - ブレスの交換を他の女子に見られてないよね?大丈夫 (2020年6月28日 5時) (レス) id: e2382ac4cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イリア x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.pnp/sakuramoti
作成日時:2020年6月2日 23時