玖拾参 ページ18
三日かけて向かった藤の家門の家で夜を待った後、Aは情報のあった山に入った。
そこにいた鬼を片っ端から炙り出そうとするも、なかなか例の鬼は見つからない。
結局その日の夜は鬼を見つけられず、Aは断念して山を下りた。
次の日も、その次の日も、Aは山に入っては例の鬼を探した。
当然他の場所へ移動したのではないかと考えたが、そうしなかったのには理由がある。
毎日十体以上鬼を狩っていないにも関わらず、遭遇する鬼の数が減らないからだ。
まるで、Aが山を下りた後、または来る前に誰かが鬼を山へ繰り出しているかのように。
そんなことが出来るのは鬼の祖であり頂点に君臨する鬼舞辻だけだ。
鬼殺隊であるAにとって、鬼舞辻の頚を斬ることは記憶を取り戻すより優先事項。
産屋敷にその事を報告した際、念のため応援を向かわせると言われたこともあり、
Aはそれまで鬼をひたすら狩り続けた。
そんな日々を送って早二週間経った新月の日の夜。
Aはようやく例の鬼を見つけ出すことが出来た。
『あなたが"記憶を操ることが出来る鬼"で間違いないないわね』
「あ、あぁ...」
完全に怯えきった鬼の様子に、Aは眉を寄せる。
鬼の恐怖の対象は自分ではなく、もっと別のものに見えた。
『...取り敢えず、私の記憶を元に戻してもらうわよ』
「う、ぁ...!」
『光の呼吸、弐ノ型___白光輪』
Aは刀を抜き、一気に鬼との距離を詰めた。
白い光を纏った刀で鬼の両腕を斬ろうとした、その時。
『...は?』
刀を振り下ろしたはずの左腕が宙に舞う。
生暖かい血が頬に飛び、次に感じたのは激痛。
Aは何が起こったのか分からぬまま、止めどなく血が流れる左肩を押さえて後ろに飛び退く。
すると、左の方から一つの足音が聞こえてきた。
月明かりに照らされたその足音の正体を見て、Aはその透明な目を見開いた。
「柱がそう簡単に腕一本失うとは、何とも滑稽だな」
猫の様に縦長の瞳孔が浮かぶ赤い目に、青白い肌。
見間違えるはずもない。鬼舞辻無惨だった。
全人類の敵であり、我が姉の仇。
その忌ま忌ましい存在に、Aは怒りをあらわにした。
『お前...やっぱりこの山に...!』
「お前の目的であったソイツを隠し、使えない鬼達で少し遊ばせてやっていた」
そう言って唇を歪ませる鬼舞辻。
Aはただただ怒りが込み上げるだけだった。
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桜餅(プロフ) - 織葉さん» ありがとうこざいます!作るの遅くなって申し訳ありません... (2020年2月16日 11時) (レス) id: 03f4026521 (このIDを非表示/違反報告)
織葉(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも頑張ってください。応援しています!! (2020年2月15日 22時) (レス) id: f370ea2008 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イリア x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.pnp/sakuramoti
作成日時:2020年2月15日 22時