43話 ページ43
どしゃ降りの中、
雨と落ちていく身体。
次第に走馬灯が見えてきて、
私は微笑んだ。
駆け巡ったその思い出が、貴方との日々ばかりだったから。
以前見た、この現象では
嫌なものばかりだったのに。
雲雀様、
結局私は貴方に救われていたんですね。
恩返し、といっても
今もこうして貴方に恩を受けている。
返しきれない程の優しい恩を
ありがとうございました。
貴方のお陰で、もう私に悔いはありません。
「……さようなら」
私は、
ゆっくりと、目を閉じた。
その刹那
「ーーー」
聞こえるはずのない声が
雨に紛れて、耳に届いた。
金属音がジャラジャラと鳴る。
そして次の瞬間
その音の主である、鎖のようなものが
私の手首に絡み付いた。
瞬間
勢いよく引き上げられる、自身の身体。
瞬く間に、私は屋上へと戻り
一体何が起こったのか分からないまま
突如、視界が黒に染まる。
さらに、苦しいほどに
私の身体を縛る、冷たい何か。
今私は、どうなっているのだろう。
分からないが、とりあえず苦しいので
縛る何かをとろうと、身を捩ると
「……もう少しだけ」
微かに聞こえた声。
「え……？」
さらに、縛るそれに力がこもった。
「く、くる……し…、」
「……………無事でよかった」
目を見張った。
雨音に紛れ、溶けていってしまいそうな程
細く、震えた
弱々しい声。
その声を発した人を
私が分からないわけもなく
焦がれ、傍にいたいと願った
私を嫌い、切り離した
けれど、何よりも大切で
大好きな
「雲雀、様………！」
その名を、口にすると同時に
私の世界は、霞んでぼやけた。
「どう、して……なん、で、ですか……」
嗚咽の混じったこの声は
貴方に届いているのでしょうか。
「私は………貴方の、邪魔……なのに、貴方を……汚した、のに」
言葉がつっかえて上手く話せない。
「泣き虫は、嫌い……でしょう？ ひ、雲雀、様も…_消えてって……言った……のに………」
「言った。けど、こんなことしろとは言ってない」
縛る腕が少し緩んで、貴方は私の目を見つめ
また私を抱き締めて、言った。
「頼むから………死なないで」
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
ラッキーアイテム
桜餅
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 79人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
阪サッカー(プロフ) - こういう非恋の小説ってあまり読んだことがないからか、最後は本当に泣きそうになりました。ストーリーも凄く面白かったです。 (2020年5月28日 8時) (
レス) id: d96a890ddc (このIDを非表示/違反報告)
桜もち(プロフ) - いつの間にか10,000hit超えてました！皆様ありがとうございます！ (2017年6月2日 22時) (レス) id: 840f834652 (このIDを非表示/違反報告)
桜もち(プロフ) - 大変申し訳ありませんが以前作っていたこの作品の続編的な作品を諸事情により削除させていただきました。詳細はメイン作品のお知らせにてご確認下さい。本当に申し訳ありません (2017年5月8日 18時) (レス) id: 840f834652 (このIDを非表示/違反報告)
練爛々(プロフ) - 桜もちさん» わかりました！暇があれば読んでみます (2017年4月19日 6時) (レス) id: 4f09b777b3 (このIDを非表示/違反報告)
桜もち(プロフ) - 練爛々さん» ありがとうございます！続編的なものを書き始めましたのでどうぞお暇があればご覧下さい！ (2017年4月18日 23時) (レス) id: bdfc419512 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
