116話 形見 ページ29
それでは、と天音さんが指を立てた。
「Aはその戦闘スタイルをどう変える？」
言われて考えた。確かに火力不足だし、これじゃあ足手まといになるだけだろう。
いっそほかの武器にかえるっていうのもありだ。だが……
「短剣は、変えない」
「どうして？」
少し呆れたような表情が見て取れた。
それでも、この意思を曲げる気はない。
「兄さんに教えてもらったものだから」
「！」
ぎゅっと、短剣を握りしめた。
使い慣れたこの青い柄の短剣。
刃はまっすぐで、持ち手と刃の境目は、銀色で青いガラスが入っている。
見れば見るほどに美しく、もう何年も使っているのに錆びないし、折れない。
むしろ使うほど美しくなっていくような、この短剣。
「この短剣も、技も戦闘スタイルも、兄さんの教えだから。今はどこかに消えてしまった、兄さんの唯一の形見だから……変えたく、ないです」
「私が来る前にいたって言う、あの人のこと？」
「はい」
「その武器じゃ弱いんだよって、もう一回体に叩き込んであげても変えない？」
「……はい」
天音さんはしばらく考え込んでいた。ふと、口を開く。
「ふぅ……そっか」
「ごめんなさい」
にこっと天音さんは優しく微笑んだ。
「いいよ、大事な人だったんでしょ、今は会えない……そういう人私にもいたから」
そう言って、どこかを向いて遠い目をする彼女。
「会えないってわかってるのに、思い出だけいつまでも抱きしめて……ぬくもりだけ探して……都合の悪い現実から逃げていく。わかるよ、そういう気持ち」
「……？」
そういう天音さんの顔はとても寂しそうで、かと思うと笑顔に変わる。
「まっ、そんなわけだから認めてあげるよ、その短剣使うこと。その代り、そのスタイルに加えるものがある。スパルタで行くけどいいかな？」
「……はいっ！」
そうして、私は気合を入れなおして、修行にまた取り組んだのだった。
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空に上がる、鮮やかな赤。
天音さんの腕と頬から血しぶきが上がっていく。
「ん、合格♪」
天音さんが明るい声でそう言う。
私は、にこりと笑った。
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桜もち(プロフ) - 2万hit突破してた、みなさんいつもありがとうございます！ (2017年8月4日 17時) (
レス) id: 840f834652 (このIDを非表示/違反報告)
桜もち(プロフ) - こちらも10,000hit突破！！感動です……皆様本当に、いつもありがとうございます！！ (2017年1月30日 21時) (レス) id: 1907d70f44 (このIDを非表示/違反報告)
桜もち(プロフ) - 甘楽さん» ありがとうございます！ですよね、細かく書きたかったんですけど、さすがにちょっと削ることにします！ (2017年1月29日 20時) (レス) id: 1907d70f44 (このIDを非表示/違反報告)
甘楽 - リング戦結構長いですよね… 何だったら戦闘シーン少し位削ってもいいと思います。 頑張ってください (2017年1月28日 18時) (レス) id: 2e2894c595 (このIDを非表示/違反報告)
桜もち(プロフ) - 守護者戦、意外と長い……！ (2017年1月27日 23時) (レス) id: 1907d70f44 (このIDを非表示/違反報告)
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