【短編集】あなたのための物語【仮面ライダーエグゼイド】 (ページ16)

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笑わせて、先生【宝生永夢】ページ16

バグスターウイルス感染症、いわゆるゲーム病。
わたしの身体は、バグスターウイルスに侵されてしまっているらしい。

宝生先生、と言ったか。
宝生先生はわたしが倒れてCRに運ばれた時、僕が絶対に治しますと言ってくれていたけれど、残念ながらわたしにゲーム病を治す気はなく。
いりませんと主張し続けて、看護師さんの気遣いもあり経過観察ということになった。

「…こんなことしてる暇、ないのにな」

そして、経過観察とする代わりに定期的に成都大学附属病院に通院してください、と宝生先生に言われてしまったわたしは今、学校帰りにそのまま病院へ来ている。

病院の前の公園のような場所に、たくさんの人やお医者さん、看護師さんがいる。
幼い子供から大人まで、たくさんの人がこの病院で元気になって笑顔になるんだろうなと思った。

わたしも、ゲーム病が治ったら笑顔になれるかな。

妹のお弁当が上手く作れなかったなだとか、相変わらず両親は家事を何もしてくれないなだとか、とっくのとうに日常になってしまったことが、わたしの心に影を落としている気がする。
宝生先生に「ストレスないので」なんて言ってしまった割に、なんだかんだストレス抱えちゃってるよな、なんて。

今日だって早く帰って、妹の好きなハンバーグを作らなきゃいけないんだ。
病院へ向かう足を早める。

妹のあの笑顔と唯一の居場所である美術部が、ストレスと疲れでふらふらのわたしを支えてくれていた。
けれど、美術部は今年度から入ってきた後輩のせいで顧問の先生にも怒られているし、部長を押し付けられたわたしがどうにかしなきゃいけない。

笑顔も居場所も、失えないから。