山田家に妹が出来ました

5話 ページ7

一郎side





｢こんにちは｣
｢………誰？アンタ
あたし、ガキには興味無いんだけど？｣






今、俺の目の前にいるのは十子ちゃんと百子ちゃんの母親


全身をブランド物で包み込み、やたらとキツい香水の匂いを漂わせている


集めた情報からこいつがよく転がり込む男の家を特定して、そこで待ち伏せていれば簡単に会うことが出来た





｢俺、イケブクロで萬屋ヤマダを経営してます、山田一郎と言います｣
｢イケブクロ？山田？………まあ何でも良いわ、なんか用？｣






目の前のこいつがあの子達を苦しめていたんだと思うと、今すぐにでも殴りたくなる衝動に駆られる


でもそれじゃダメだ、耐えろ俺


今日はそれが目的で来たんじゃない





｢貴女には、2人の娘さんがいますよね？十子ちゃんと、百子ちゃん｣
｢ああ………
いるけど最近は顔合わせてないわよ、家にも帰ってないし｣





派手なネイルを気にしながら淡々と言い放つ女





｢………気にならないんですか、自分の娘ですよね｣
｢………別に、顔は合わせてないけど一応食べ物は玄関の前に置いたりして与えてるし、死にはしないでしょ？｣





は？





｢………俺、前に2人に会いました
2人とも熱中症になって、それでも十子ちゃんは泣きながら百子ちゃんを助けようとしてました
病院に連れて行ったら、栄養失調になってたことも判明しましたよ｣
｢！………で、生きてんの？あの子ら｣
｢生きてますよ、運よく｣
｢あっそ、生きてるんなら良いじゃない｣









ふざけるなよ………









｢犯罪だぞ｣
｢は？｣
｢あんたがやってることは、立派な犯罪だ
あんたは立派な犯罪者なんだよ｣
｢………｣









俺達の間に沈黙が流れる









｢………あの子達は、正規の手続きをして、俺達の家族として受け入れることにしました
問題ありませんよね｣
｢………勝手にすれば？どの道、子供の愛し方も分かんないあたしには、あの子らを愛してあげることは出来ないし


あの子らのせいで夫に捨てられたって思ってる時点で、あたしは母親失格なのよ｣




え………





｢これから変われる気もしないしね、踏ん切りつかなかったし、どうすれば良いかも分かんなかったから丁度良いわ｣
｢………｣
｢愛してやってよ、あの子らのこと｣
｢………当然です｣
｢あ、あと、許してとは言わないから、もしあたしが変われたら、会わせてくれる？｣
｢………変われたら、ですよ｣









｢2人のことよろしくね｣

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