【銀魂】ふわふわな君を。

４６話　きゅん ページ48

貴女side


「旦那、Aに変なコトしませんでしたよねィ？」

「テメェと違って大人の余裕があるから出しませんー」

「ビビって出せなかったの間違いじゃ？」

「なんだとテメェ」


厠から総悟が戻って来た。
おうと言って手をひらひらと振る彼に、私は一応手を振り返した。


「…A？」

『あ、ごめん…ボーっとしてた』

「また熱でも出たんじゃねェだろうな」

『そんなしょっちゅう風邪なんかひくか！』


先程の銀時とのやりとりが心に残ってる。
あんなこと聞くってコトは…やっぱり私の気持ちに気付いてなかったのか畜生。
と思って少し気分が下がっていると、二人に心配されてしまい、私は笑顔を見せた。


「それじゃ、行きや―」

「総悟ォォォォォォ！！」

『十四朗？！』「多串くんだ」

「ゲッ…土方さん」


総悟がそろそろ行こうと立ち上がった時、聞きなれた彼を怒鳴る声。
予想しながら振り返れば、青筋を浮かべる十四朗。
もしかして、総悟は仕事サボって…。


「テメェ勝手に休んでんじゃねェェェェ！」

『やっぱりね…』

「…仕方ねェ、戻りまさァ。A」

『ん？』


十四朗の言葉を聞いてやっぱりと頷いた。
戻ると聞いて案外簡単に食い下がるなと思っていれば名を呼ばれ顔を上げた。
そして、愛らしいリップ音と、確かに頬に柔らかい感触を感じた。
総悟の唇だと理解すれば、急激に体温が上昇した。


『なっ…あ、アンタねぇ！！』

「―…行って来ますのチューでさァ。んじゃ」

『ざけんなバーカ！
…銀時どうしたの？ねえ、ちょっと―…』


思わず鯉の様に口を閉開させた。
ニタリと笑って去ってった総悟に、腹が立ったのは言うまでも無い。
叫んでから銀時の方を見れば、俯いていて。
具合でも悪いのかと思って顔を覗きこめば、彼の顔は悔しそうに歪んでいた。


『な、に、その顔…』

「―目の前で、頬だつってもキスされりゃ悔しいに決まってんだろ。
…超腹立つ」


なんとなく怖くて一歩二歩と後退すれば、ガシリと両手首をつかまれた。
見上げて何と問えば、ギリっと歯を噛み締める音の後に、嬉しい言葉。
その顔に、声に…全てにきゅんとした。


「…コレで最後まで付き合えよ」

『わ…わかったわよ！！』

「決まりな。行くぞ」


手を解放されたかと思えば、ぎゅっと恋人繋ぎをされた。
内心驚いていると、ニッと笑う銀時に最後まで付き合えと言われた。
その幼い顔に心打たれてしまって、私は手を握り返して、思わず頷いてしまった。

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