【銀魂】ふわふわな君を。

１９話　馬鹿ね、私たち。 ページ21

貴女side


『はぁっ…お、沖田ァァァァァッ！！

―……居ないのかな』


走り続けて、やっと着いた。
屯所前で腹から声を出して、沖田を呼ぶ。
なのに、彼は返事もなく、現れもしなかった。


『沖田っ、返事、しに来たの！！
もう、逃げないからっ！！』

シン…。

『おきたぁ…』


何度叫んでも、沖田は一向に現れる気配がしなかった。
もう話すことも、名を呼ぶことさえできなくなるのかと、途端に不安と寂しさが込み上げた。
その場に座り込んでしまった。


『おきたぁっ…！』

「―何やってんでィ、アンタはよう」

『沖田…！』


もう涙も想いも止まらなかった。
涙を流しながら、最後にと思いきり名を呼ぶと、後ろから強く抱きしめられた。
振り返ると、求めていた彼。


「いきなりあんな事して、すいやせんでした。
別に、嫌いになるなら、それでも―」

『嫌いになるわけないでしょ！』

「！」

『そんなの、絶対あり得ないんだから…』


私が振り向いたことで、視線が絡みあい、顔が近い。
沖田は片手で私の濡れた頬を拭い、そう言いかけた。
前の私なら、きっと嫌な言葉を吐くだろうが、もう違う。
私の言葉が意外だったのか、彼は目を見開いた。


「Aさん…」

『っあのね、気づいてるかもしれないけど、私は銀時が好きなの。
もう諦めなきゃいけないのに、全然ダメで…馬鹿みたいでしょ？
しかも、アンタの気持ちに薄々気づいてたのに、知らないフリしてて、私、ほんとに嫌な女なの！』


沖田の腕の力が抜けてった。
私は立ち上がって涙を堪えると、未だに座り込む彼にそう喋り出した。
全部隠さず、伝えなきゃ。


「んなこと言ったら、俺もアンタと同じ嫌な奴でさァ。
俺だってアンタの気持ちくらいすぐ気付いた、好きだから。
でも、知らないフリして、弱ってる所に付け込んで、全部奪って、俺だけの物にしようとした」

『そんな…！』

「…それと、俺も馬鹿なんで。
アンタの旦那への強い想い今聞いたってのに、逆に燃えて、諦めらんねェ。
俺だけの、ものにしたい」

『―お互い、馬鹿なのね』


沖田は立ち上がり、私と視線を合わせてそう言った。
私が否定しようとした時、彼は私の唇に触れて黙らせた。
次には私を抱きしめ、耳元で、かすれた声でそう言うから、私も抱き返し、フフと笑った。


『沖田、ありがとうね』

「これから覚悟してくだせェ」

『上等』


私が礼を言うと、沖田はニヤリと笑って宣戦布告。
だから、私もニッと笑ってやったのだった。

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