第拾参話 『生きて』 ページ14
.
動かなくなったお父さんをぎゅうっと力の限り抱き締めた。
…んで…何でこんな事になったの。
何で?私達が何をしたって言うの。何でお父さんとお母さんが死ななきゃ行けないの。
ねえ
二人を殺したのは……誰?
これから私はどうやって生きて行けばいいのか、何を生甲斐にして行けばいいのか、もう…分からない。
「な、にも…分からない、よ…お父さん、お母さん…
おばあちゃん…!」
ふとそこでおばあちゃんは何処に居るのだろう、と言う疑問が湧いた。
家の中からおばあちゃんの匂いは感じられない。
何処に、と思った時だった。
「Aッッ!!!」
「…ぇ…」
私の名前を呼ぶおばあちゃんの声がして、振り返るとそこに居たのは…刀を持ち、大きな角を二つ生やし、紫色の禍々しい空気を纏った大男。
明らかに人ではないそれは、ギザギザに尖った歯を見せ、ニヤリを口角を上げてそのまま大きな刀を振り下ろした。
おばあちゃんが私の名前を叫ぶのが訊こえる。
振り下ろされる刀を見た私は、同時に死を悟った。
あ……私も、死ぬんだ。
お父さんとお母さんの所に行くんだ…。
それならもう
寂しくないよね。
おばあちゃんを一人にしてしまうなぁ、と思いながら死を覚悟して目を閉じた。
けれど、一向に待っても痛みは訪れなかった。
代わりに生温かい何かが顔にビチャッと付着した。
不思議に思い、閉じていた目をゆっくりと開く。
開いた先に見えた次の光景は……
「…ゲホッ、A…ごめん、ねェ…」
「お、ばぁ…ちゃん…?」
「あな、たは……生きて……」
口から血を溢しながら、私の目の前でおばあちゃんが倒れた。
倒れたおばあちゃんを見ると、大きな斬り傷。
それを見て私はおばあちゃんがあの怪物から庇ってくれた事がわかってしまった。
「…う、そ…嘘、だ…嘘だよね…?おばあちゃん…ねえ、返事をしてよ…」
手を伸ばして肩を揺すっても、おばあちゃんは目を重く閉ざしたまま開く事はなかった。
何で謝るの。
何で庇ったの。
私もお父さんとお母さんの所へ行きたかったのに。
何で…おばあちゃんが死んじゃうの。
私もみんなの所に行きたい…死にたい。
死にたいのに…ッ!!
『貴方は生きて』
「ッッ!」
おばあちゃんの言葉が頭の中に響いた。
私は死にたい。
けれどおばあちゃんは私に生きろと言った。
何が正解なの?
.
499人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
凛音 - 本当に面白いです!続きがめっちゃ気になります!頑張ってください! (10月30日 17時) (レス) @page23 id: 0943923905 (このIDを非表示/違反報告)
シンヤ(プロフ) - 続きとても楽しみにしています。 (2022年2月22日 9時) (レス) @page23 id: 42d6be6a70 (このIDを非表示/違反報告)
カニカマ(プロフ) - 14話の第三の選択っていうセリフ、どっかで聞いたことあると思ったらキノの旅だコレ (2020年7月6日 23時) (レス) id: e7530bdad7 (このIDを非表示/違反報告)
奏芽 - 切なくて涙が出てきましたw更新待ってます!!! (2020年4月15日 6時) (レス) id: 6107720ed6 (このIDを非表示/違反報告)
涙(プロフ) - 続き楽しみにしてます!更新頑張ってください (2019年12月18日 14時) (レス) id: 5e6c663fd7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:サヒア | 作成日時:2019年8月29日 0時