十億…まどる？？ ページ31
.
それを聞いた名前の知らない男の子が、慌てた様に学園長に話し掛けた。
「そんな…！どうかそれだけはお許し下さい！俺はこの学校でやらなきゃいけない事があるんです！」
「馬鹿な真似をした自分を恨むんですね」
「許して頂けるなら弁償でも何でもします！」
「このシャンデリアはただのシャンデリアではありません」
あ、ダメだよそんな簡単に“何でもする”なんて言ったら。後が怖いし、後々後悔するの自分だよ〜？
なんて思いながら、ユウ君に渡されたハンカチで傷口を抑える。
そして学園長はこの壊されたシャンデリアが、ただのシャンデリアではない理由を説明し出すのだった。
このシャンデリアは、魔法を動力源とし永遠に尽きない蝋燭に炎が灯る魔法シャンデリアで、伝説の魔法道具マイスターに作らせた逸品なんだとか。
さらに学園設立当時からずっと大切に受け継がれて来たらしい。
「歴史的価値を考えれば十億マドルは下らない品物ですよ」
「「じゅ、十億マドルぅうううう！！？」」
「『まどる？？』」
十億のヤバさはわかる。
だが、それは私達の国の円で例えたらだ。
マドルと言う初めて聞いた通貨名に私とユウ君は、？マークを頭に浮かべた。
彼らからの反応からして、相当な額なのは間違いないようだ。
「それを弁償出来るとでも？」
「で、でもさ。先生の魔法でパパッと直せちゃったりとか…」
「魔法は万能ではありません。しかも、魔法道具の心臓とも呼べる魔法石が割れてしまった。もう二度と、このシャンデリアに光が灯る事はないでしょう」
魔法石って…あのマジカルペンについてる宝石みたいな石のことか？
なるほど。あれが壊れたりしちゃうと、魔法が使えなくなるんだ…。
いや、てかなんつーもんを食堂のシャンデリアにしとんだよ！！これだから金持ち校はやだわぁ〜。
「そんなぁ…」
「ちくしょう…何やってんだ俺は…！母さんに何て言えば…」
「ふなぁ…」
「大変な事になったね…」
『半分以上、自業自得だけどね』
生徒それぞれ、やはり様々な事情を抱えているらしい。
退学になったら、私らは一体どうなるのかと思っていると学園長が「あ」と何か閃いた様に呟いた。
「…一つだけ、一つだけシャンデリアを直す方法があるかも知れません」
「ええっ！？」
「ほ、本当ですか！？」
退学を免れると言うのなら、恐らく彼らは何でもするだろうなと私は一人そう思った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 363人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：サヒア | 作成日時：2020年5月7日 2時
