地味な作業嫌いじゃない ページ28
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…何でこんな事になってんだ。
ただただ無言で私は窓ガラスを拭き続けていた。
あの後騒ぎを聞きつけた学園長がやって来て、石像をやや焦げたびしょ濡れにした罰として結果全体責任として放課後、大食堂の窓拭き掃除百枚の刑を命じられたのだ。
グリム、エース、ユウ君、そして私に。
早く終わらせたかったので、私は一足先に窓拭きに勤しんでいた。
のだが
「それにしてもエースってヤツ、遅いんだゾ。オレ様を待たせるとはいい度胸だ!…まさかアイツ、逃げたんじゃないだろーな!?」
そうなんだよ。
あのエースとやら、どんだけ待っても来ないんだよねぇ〜。
あの性格だし、これ絶対サボったな…アイツ。
チラッとユウ君を見ると、同じ事を考えていたらしく、苦笑いを溢した。
そしてその事にようやく気付いたグリムは、怒り狂っていた。
「罰をオレ様達だけに任せて逃げるなんて許さないんだゾ!」
「行くぞ子分共!」と言ってグリムは走り出した。
エースを捕まえて窓掃除をさせる気らしい。
つか、え?子分って私らのこと?
誰の子分だよおいコラァア!!
ユウ君も私もあんたの子分なんかじゃないっての!
えー…でも探しに行くの面倒だしなぁ…。
『グリムとユウ君はアイツを探して来て。私はここで窓拭きして待ってるから』
「え…でも、一人で大丈夫?」
『大丈夫大丈夫!それにちょっとでも終わらせて置きたいし。グリム!絶対エースの奴とっ捕まえて来てよ!』
「オウ!任せるんだゾ!」
『って事だから、ユウ君。グリムの見張り宜しく!』
「…まさか本音はそっち?」
『……………エヘッ☆』
「おいユウ!何してんだゾ!」
じとーっと半目で疑う様な目でユウ君に見られながらも、私はグリムとユウ君を見送った。
さて、と私は一人窓拭きを再開した。
にしても窓拭き百枚かあ…。
大変だけど、こう言う地味な作業嫌いじゃないんだよねえ。地道にコツコツやりますか。…一人で。
何たって快斗の怪盗道具のメンテナンスとか、寺井さんと一緒に手入れとかしてたし。
『…ちょっと懐かしいな』
思わずそう呟きながら、窓の外を見上げた。
…っと、いけないいけない!
感傷的になってる場合じゃない。
今は窓拭きに集中集中!
じゃないと百枚なんて終わんないし。…あの二人大丈夫かなぁ。
…何か問題事を引き連れて戻って来そうな気がする。
そう思った瞬間、ドタドタと足音が聞こえて来た。
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作者名:サヒア | 作成日時:2020年5月7日 2時