ラッパー短編集2

▲好き＊山田二郎 ページ9

『……二郎？』
「ｯAさん！？」

仕事帰り恋人と出くわした。

「二郎く〜ん？知り合い？」

しかも女を連れて歩く、恋人を。

二郎は俺に気付くと慌て始めた。……浮気……？
まぁ仕方ないのか。20代の野郎よりもクラスの若い女の子の方が……二郎、男的に良いのかね。
俺はあんまどうでもいいけど。
苛立ちではなく、許してしまう気持ちがある俺は甘いんだなとつくづく。
さっきから女の子は二郎に「ねぇねぇ二郎く〜ん」と猫なで声で話しかける。
……あ、今ちょっとイラついたかも。
そうなってくると苛立ちは完全に出てきて……。
仕方ないという気持ちと、苛立ちが混ざりあって気分が悪い。

「お兄さん誰？二郎の知り合い〜？」
女の子が遂にこっちにまで話しかけてきた。もう逃げたい。
『二郎の兄の"友達”です。二郎、一郎によろしく。じゃ』
とぶっきらぼうに言って早足で家まで帰る。
はぁ……仕事終わりにちょっと二郎の顔見ようとか思うんじゃなかった……。


その日の夜、俺は昼間あった事を忘れたくて酒を飲んだ。1本だけ。
実際俺は酒は強くない。むしろ弱い。だから嫌い。
まぁ酔ってしまったが、昼間の事は忘れることが出来た。
『……ﾋｸｯ……あ"〜ｯ……やっぱ俺じゃダメだったかなぁ……』
しかし、出てしまった一言で苛立ちや悲しみがぶり返し、気付いたら泣いていた。
23にもなって1人酒して泣くとか……恥ずい……。
そのまま号泣して、泣き疲れて寝た。


『ｯ……あ"……ん"〜……寝てた……？ｯいｯｯてｪ……！頭痛い……』
昨日ガブガブ飲んだからだろうな(しかし1本)。後悔後悔。
すると何処からともなく漂ういい匂い。
『……？目玉焼きの匂い……？何でだ？』
痛む頭を抑えながら台所へ足を運ぶ。

「ｯAさん！おはよ……！」

『へ、じろ？』
そこに居たのは、エプロン姿の二郎だった。
何で、二郎が新宿の俺の家に居るんだ？……てか、もう好きじゃないだろ？
「急に来てごめん……あの、朝ご飯作ったから……食べて？」
『あぁ……ありがと』
椅子に座り二郎が作った目玉焼きを頬張る。普通に美味かった。
それより何で俺の家に……あぁ、鍵渡してたんだっけ。家も教えてた……。
まぁ、いずれ返してもらわなきゃだな……。

食べ終わってソファに座っていると、二郎が隣に座った。

＊文字数ｯ……！

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