ラッパー短編集2

リク△アタック＊神宮寺寂雷 ページ26

「という訳だから、今夜ご飯はどうだい？」
『どういう訳ですか行きませんけど』

今日も駄目でした。
私は、いつもこの病院に仕事の都合で来る四ノ宮A君に惚れている。
この歳で恋なんて、遅すぎる気もするけど好きなんだよ。
でもまぁいつものように今日も振られました。
そりゃA君だって若い子と恋したいだろうし
こんなおじさん、相手にされないのだって分かってるさ。

それでも、私は彼が好きなんだ。

『毎回毎回懲りませんね。俺だったら1回で折れますよ』
「ふふ、そうかい。私は明日来ても、同じ事を言うと思うよ」
『そりゃ勘弁』と笑って資料を置く彼。
この会話も、いつかは無くなる……そう考えるととても寂しい。
いつかA君も恋をして、恋人を作って、結婚して……

その時、私は彼に何て顔を合わせよう。

「今までずっと想いを寄せていた者です」だなんて言えない。
彼も奥さんに
『仕事の関係で話してた先生』と言うのだろう。
結婚式、珍しくしっかりとスーツをキメてる彼に、美人な女性。
美男美女、だなんて呼ばれ、子供もそう……可愛い、かっこいいだの呼ばれるんだろう。

そんな彼らに、私は要らない。
この恋も諦め時ですかね……。

『……せ、……んせ、先生！』
「ｯえ……」
『どうしたんすか、呼んでも無視して』
「す、すまない……考え事をしていて。
申し訳ないね、嫌な相手に振り回されて……」

『……目の前に大好きな俺が居るのに考え事ですか……』

「……え？」
『何でもないです』
そう言って鞄を持って帰ろうとするAくん。
突然の事に言葉が出ず、動けなかった。

『……鈍感ですよね、先生。

嫌いだったら仕事関係無しに毎日来ませんよ』


「……それって…」
『ｯあとは自分で考えて下さいｯ！！』

そう言ってドアを閉め帰るAくん。

……これは、期待してもいいんだよね。


〜fin〜

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