Wake up (ページ9)

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【先輩】ページ9

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　あれは多分、高校一年の夏前だったはずだ。

　「あーもー！なんも分かんない！！」

　シャーペンを転がして机に突っ伏すA。授業中に寝てしまったAはその教科の先生に課題をもらって「今日中にだすこと」なんて言われていた。部活にもいかず頑張っていたようで、俺の部活が終わって今日は一緒に帰る日だから、と様子を見に行けば、半分くらい終わった課題をテーブルに広げたまま窓の外を眺めていた。

　俺が声をかければ「もうすぐ来ると思って待ってた」なんて疲れたように笑って言う。…教えてもらおうってことか。頑張ってた痕跡はあるし、しょうがない。と、隣に座って教えてやっていたのに、ペンを放り投げる隣のやつ。お前終わらないと俺も帰れないじゃん、なんて思いながら声をかける。

　「もう代わりにやってよ」
森「やだ。これお前もらったやつでしょ。絶対やんない」
　「ならもっとわかりやすく教えてよ」
森「無理。俺だってそんな頭良くないの知ってるだろ」

　残念なことにAは勉強が苦手だ。特に数学。…国語だけはとても得意。逆に言えば国語以外は苦手ってくらい。A程ではないにしても俺も頭がいい方ではない。Aよりも少し真面目に授業を受けてるってだけ。それだけの差。

　「…後二問かー」
森「待っててやるから頑張れ」

　体を起こし、数学の先生に出された課題を頬杖をついて眺める。その姿を眺めながら俺は携帯をいじって待っていた。

　「なんだ、居るんじゃん」

　俺は携帯、Aは課題を眺めていた視線をその声にあげる。俺よりもAは何倍も反応が良かっただろう。

　「樹先輩！…と、北斗先輩」
北「俺ついでみたいなのやめれる？」
　「だって後ろにいたから、樹先輩よりも後に見つけたんですもん」
樹「そんで慎太郎はなんでそんなムスッとした顔してんの」
森「別に、ムスッとしてない」
　「で、どうしたんですか？まだ帰ってなかったんですか？？」

　さっきまでのうなだれた感じは何処へやら。嬉しそうに立ち上がり先輩二人のもとへ行く。元々同じ中学だった北斗と男女は違えどAと同じバスケ部の樹。

　…俺だって二人のこと最初は先輩ってつけて敬語にしてたけど、中学の時点で北斗に「お前のそれは気持ち悪い」なんて言われたから砕けた話し方してるんだからな。それを聞いた樹も別にいいって。Aもそれでいいって言われたのに落ち着かないって敬語を貫いてる。