Wake up (ページ14)

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　「樹先輩ほんとひどくないですか？北斗先輩にチクりますからね！」
樹「別にチクってもなんともないけど？」
　「ひどい人だって認識植え付けてやる」
樹「別にそんなひどいことしてないはずだけどな」
　「してますー！」

　こっちまで聞こえるくらいの声で楽しそうに会話をするA。あーもー…ほんとあいつ分かりやすい。

　「うわっ…ちょっと！」
樹「なに」
　「なんで引っ張るんですか！髪は女の命とか言うでしょ！？」
樹「目の前で揺れてたら気になるだろ。なんかしっぽみたいだったし」
　「だからポニーテールって言うんですよ？」
樹「それくらい知ってるわ」

　結ばれた髪をつかんでAをからかう樹先輩と嬉しそうにするA。あんなん俺がやったら絶対思いっきり叩かれるぞ。

　というか、なんであいつら2人なの。別の先輩とか、Aの友達とかはなんでいないんだよ。なんで二人きりなんだよ。

ジ「慎太郎？顔怖いけど？」
森「あ、まじ？」
ジ「そんな怖い顔してストレッチしなくてよくない？今日調子悪かった？」
森「あー、まぁ、そんなとこ」
ジ「へー…。」

　変なことを言わないように誤魔化した。怖い感じの顔になってたか。無意識。

　少し離れたところから「集合！」という声が聞こえ急いで顧問のもとに向かう。俺の横を走っていたジェシーが途中で「なるほど」なんて言ったから「どうした？」と俺が聞けば「あとで」なんて返された。

　顧問の話が終わって部活が終わり、部室に戻りながらさっきの言葉の意味をジェシーに聞く。

ジ「Aが樹と一緒に居たから嫉妬で怖い顔してたんでしょ？」
森「はぁ？なんで俺が嫉妬すんだよ」
ジ「だって慎太郎、Aのこと好きじゃん」
森「……気付いてたんだ」
ジ「二人見てりゃ分かるよー」

　ケラケラと笑うジェシー。バレてたなら隠す必要ないしそのまま認めた。そんな俺の頭の中にはしっかりとジェシーが言った「樹」という名前が刻まれた。

森「嫉妬、だったね。多分。…というか、あの感じだとA、樹先輩のこと好きだしね」
ジ「え！？あの距離で見ただけで？」
森「分かるよ。何年あいつの隣居ると思ってんの」
ジ「おー！さっすが」

　その日以来、たびたびAが樹といるところを見るようになった。そのタイミングで俺のコミュ力を大発揮して仲良くなることには成功した。

　そのせいで二人の関係をより近くで見ることになってしまったことだけは失敗だったな。