56 ページ7
.
結局、大我に何も知らせることが出来ないまま月日が過ぎていく。喉の調子を誤魔化すために少しだけ、いつもと違う歌い方をライブで研究をしてたら大我に機嫌を悪くされるわ、前からライブを見に来てくれている人からも「どうしたの?」といわれるわ、大人の人にも「なんか違う」と言われるわ…。
誤魔化すことなんてできないし、研究をしても意味がない。それを実感した。だから前の病院の結果、現在病院に通院していることを大我に言わなきゃならない。そして今後のことを話さなくちゃいけない。なのに、それをいつまでもできずにいた。
その間にもジェシーと樹と優吾くん。そして北斗くんに森本さんもよくライブに来てくれるようになって、お世辞かもしれないけどいい感想をくれて。それを見るたび、大我への報告がしづらくなる。しなきゃいけないけど、気持ち的にしたくなくなってしまう。
高「あの…」
「っはい!…って、優吾くん、だ」
高「なんか、おつかれ?」
ライブの後、いつも恒例の反省会という名の打ち上げ。…に、なると思ったのに、まぁ今回も大我は機嫌悪くなっちゃいまして、
京「反省しかないだろ。そんなのもう少し頭冷ましてからやろ」
と言い残してさっさと帰ってしまって、とりあえず打ち上げは無し。大我の言う通り、喉への負担を減らすための工夫をしていた結果、全く満足の行く完成度ではなく、反省しかなかった私はもうお酒を飲んでストレスを発散したくてとりあえず一人で飲みに来た。
優吾くんがいようがいまいがどうでもよかった。どこへ行こうかと思った時に浮かんだのが優吾くんのバイト先で。入って一人で飲んで、程よく酔っていた。酔えば楽しくなって一時的にでも気持ちが楽になるかと思っていた。
でも、そうではなかったみたい。頭の中はぐるぐると自分の喉の事、ライブの事、大我のことでいっぱいで。酔ってるのに楽しくない。一人で飲むって私向いてないかも。それにお酒自体、喉にいいわけじゃないしやめた方がいいんだけどこれに頼るしかなくなってること自体、自分がどんな状態にあるか表してるようだ。
楽しくない。悲しい。気分を上げようとしても今後のことでどうしても悲しくなる。それを流すためにお酒を飲む。流れない。もう一回飲もう。
そんなことを繰り返している私の目の前に、いつの間にか現れたのが優吾くんだった。いや、そりゃバイト先だしいるだろうけど、びっくりした。
354人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:天羽 | 作成日時:2022年11月30日 3時