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どこからそんな自信が湧いてくるんだ。なんて思いながらも「とりあえずお願いね」なんて言えば「おぅ」と返される。
ずっと操作していた携帯を机に置くと同時に「そーいやさー」なんて次の話題に切り替えられる。
樹「ジェシーと。2人で出かけたんでしょ?」
「ジェシーから聞いたの?」
樹「否定しないってことは行ったんだ」
「行ったけど…だからなに?」
樹「ずるくない?俺も前からデートしたいって思ってたのに」
「ズルいとかないでしょ。ていうか、今こうやって二人で出掛けてるじゃん」
樹「ジェシーの方が先っていうのがなー」
「…っていうか、私の質問は無視?」
樹「え?…あぁ、聞いたのはジェシーじゃないよ。慎太郎」
「森本くん、か」
レジで私が泣いてしまった日、雰囲気を変えようとしてか、二人がそんな話をしていたような…。森本くん、あの後詳しく聞いたのかな。それを樹に…?…余計なことを。
樹「どうせ高地とは出かけたことあるでしょ?」
「…まぁ、ないとはいわない」
あのバイクに乗せてもらった日を一緒に出掛けた日とするのなら否定はできない。でも、それはジェシーとか樹みたいにご飯を食べに来たとか、そういうのじゃないし…なんとなく微妙な気がして返答があいまいになる。でも、それを特に気にする様子もなく樹は続けた。
樹「ジェシーと高地と俺とは出かけたことあるでしょ?北斗とか慎太郎は?」
「その二人と一緒に出掛けたことはないよ?…なんか探ろうとしてる?」
樹「ならさ、きょもは?」
「大我?」
樹「一緒にいる時間は長いだろうけど、デート…みたいな?2人でバンド関係なくご飯食べにきたりとか、したことある?」
「…あー……」
思い返せば、パッと出てこない。ご飯を食べたりお酒を飲んだり。それは打ち上げでだったりバンドのメンバー全員で打ち合わせをしながら。買い物に出ることもほとんどないし。樹の言うような二人での時間の共有の仕方は記憶にある限りほとんどない。あったとしても出会ってすぐの頃とか?
樹「ないならさ、やってみな」
「はい?」
樹「仲直りは大事だよ。もっと後悔する前に解決しちゃいな」
急にまた悪い顔をしながら意味の分からないことを言った。「何言ってんだ」と思うと同時に樹の携帯が鳴る。
にやけ顔のまま電話に出て、キョロキョロしたと思ったら手を上げる。誰かを見つけたみたいに。
樹の見る方には大我が立っていた。
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作者名:天羽 | 作成日時:2022年11月30日 3時