sound 2 (ページ28)

今日:5 hit、昨日:46 hit、合計:53,979 hit

77 ページ28

side.j

　酔いが回った。なんて言ってごまかしてるけど、さっきの言った好きなとこ、全部俺に向けたマウントみたいなもんでしょ？「俺はこれだけAが好きで、知ってんの」っていう。無意識かもしれないし、こーちらしくないけど。

　酒で暑いのか照れてるから暑いのか。わかんないけど手で顔周りをパタパタと仰ぎながらふーと息を吐くこーち。それを見る慎太郎も俺と同じようなこと思ってんだろうな。こーちっぽくないって。

ジ「…よかった。聞けて」
高「でも、なんとなく分かってたっしょ？」
ジ「そりゃさっきの見たらね」
高「さっきも言ってたけどさー、俺そんなにコンビニでわかりやすくしてた？」
ジ「そりゃもう！心配ー！とかやさしくしたーい！っていうの駄々洩れ！」
高「マジかー！はっずかしい！」
森「頭も撫でてたじゃん？」
高「…あれは無意識!忘れろ！」

　こーちが話してくれたことで晴れて？俺とこーちはライバルっていう感じになるわけだけども…わかりやすく負けが分かってるんだよな。だからってすぐに諦められるような性格でもないから諦めはしないけど。

　コンビニで、バイクの音が聞こえてきただけで泣きだしたA。

　それまでは泣くのを我慢してて、何かあったことすらも隠して何でもないようにしていたのに、ただのバイクの音。それが聞こえてきただけでボロッと泣き出してしまった。泣きだした瞬間、バイクの音に気付いていなかった俺は何がきっかけで急に崩れてしまったか分からなくて驚いた。

　ちょっとして、ふとバイクの音に気付いた。でもだからってなんで？としか思わなかった。「他のお客さんが来ちゃう」って焦ったくらいだし。

　そんな中で入ってきたのはこーちだった。それで全部つながった。こーちのバイクの音だったことも、それにAが気付いたことも。

　それだけならよかったけど、気付いて泣くって…。絶対何かある。それにその涙の訳をこーちは知ってて、無意識に撫でたくなるくらいのことで…。

　Aがこーちをどう思っているか。俺のことをどう思っているか。知らない。でも、一歩ズレて二人を見ればわかる。恋愛的なものとは少し違ったとしても、Aの中でこーちは特別なところにいる、ということ。

　これはAに気があるっていうフィルターがあるから感じるっていう訳ではない、はず。その証拠に一部始終を見ていて、俺の話もこーちの話も聞いた慎太郎が俺のことを切なげな表情で見ていた。