aversion 2 (ページ44)

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樹「つーか、高地はどこ行くとこだったんだよ。そのかばんジェシーのだろ？」
高「あいつの出番終わったら一緒に帰る予定だったから、お迎え？みたいな」
樹「ならさっさと行った方がいいんじゃない？かばん探しに行ってたら困るだろ」
高「連絡はしてたけど…まぁ、しょうがない、行くか」

　近い距離になっていた私と高地くんの間に入ってきた田中くん。田中くんの言葉に高地くんはいつの間にか床に置いていたジェシーのかばんを持ちあげる。

高「じゃーね。また休み明けー」
　「またね」
樹「じゃーな」

　いつも通りの笑顔で手を振ってから去っていく高地くんの背中にベーっと舌を出す田中くん。子どもかよ。

樹「俺にもあんなふうに話してくれてもいいのに。」
　「ありえないね」

　下駄箱で靴を履き替えて、また歩き中庭から聞こえる音が小さくなった頃、少しショックを引きづりながらも口は動かし続けていた田中くんが「ねぇ」と立ち止まって呼び掛けてくる。

樹「今日さ、もう暗いけど、やっぱり一人で帰る？」
　「当たり前じゃん？」
樹「心配、なんだけど？」
　「大丈夫ですけど？」
樹「折れてはくれない？」
　「折れると思ってる？」
樹「だよねー…」

　何をいまさら当たり前なことを。なんて思いながらまた足を動き始める。すごく自然に私の進む方に一緒についてくる。さっき折れないって言ったばっかだよね？

　なんでこんなに自然？なんて思ったけど思い返せば夏祭りのあたりに一緒に駅まで行ったことがあったはず。そのせいか。ここで「ついてくるな」といって時間が伸びるのも嫌でそのままにした。

樹「あーあ、着いちゃった」
　「またね」
樹「早くない？挨拶。まぁ、挨拶してくれるだけでも嬉しいけどさー」
　「またね」
樹「機械的…。しょうがない、またね。気を付けてね」

　駅で速攻別れようとすれば抵抗みたいにまたベラベラと話す。私が同じことしか繰り返さないことを悟るとすぐに折れて手を振り返してくる。それを確認してすぐ駅の中に進む。少しして振り返ってみれば来た道を戻る田中くんの姿が見えた。…やっぱりこっちの方じゃないんじゃん。

　田中くんのせいで、すごく大変というか、疲れた文化祭だった。役割とかそういうのがあったわけじゃないのに。…でも、田中くんのおかげで、後夜祭も見れたし、気持ちの奥底までスッキリしたし…ほんの少しだけ、楽しかったかな、なんて。…絶対田中くんには言わないけど。