aversion 2 (ページ18)

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　「何か御用ですか？」

　少しの呆れのようなものを含めて言う。いつもの通り、含まれたものなんて一切気にしない様子で「ん－？」なんて返してくる。

樹「Aちゃんがここにいるの分かってるんだから、来るでしょ」
　「迷惑。今監視中だから」
樹「でも、今人いないし、少しくらいいいじゃん。一人でやってたの？」
　「もう一人いるけど、トイレ行ってる」
樹「女の子？」
　「そうだけど」
樹「よかった」
　「よかった？」
樹「男と一緒だったら羨ましくて騒いでた」
　「マジもんの迷惑じゃん」

　本当にこの人は呆れることばっかり言う。しゃがみこんで椅子に座る私を見上げるようにしたまま動く気配のない田中くんにもう一度ため息をつく。

樹「あ、そうそう。…これ」

　田中くんがポケットを少し探って、握った手を私の前に差し出す。何事かと田中くんの顔を見ればその手がパッと開かれる。

　「飴？」
樹「そうそう。もらったやつなんだけど、Aちゃん、この間りんご飴食べてたし、リンゴ味の飴も好きかなーって思って。あげる」
　「…はぁ、どうも」

　別に好きでも嫌いでもないリンゴ味の飴。でも、ずっとただ座っていただけだったからか、甘みを見たらちょっと求めてしまって素直に受け取る。それをすぐ口にいれればりんごの味が広がって少しだけ癒された。

樹「おいしい？」
　「ん。」
樹「ならよかった」
　「…で、あなたはずっとここにいるの？」
樹「ん－…ずっと、というか…。Aちゃん、交代何時？」
　「…あと30分くらい、だけど」
樹「その後一緒に回らない？ってお誘いに来たんだよね。どう？」
　「…やっぱそうだよね」
樹「予想してた？」
　「嫌な予感がしてた」

　「嫌な予感かー」なんて笑う田中くん。森本くんが“田中くんが私を探してる”なんて言ってたのを聞いたときにその理由、なんとなく察してたわ。

樹「夏祭りと違ってさ、学校内にいるのは分かってたし、二日もあれば少しくらい一緒にいれるかなーって思って俺、誘うのずっと我慢してたんだよ？少しでもうざがられないようにって」
　「…そういうことだったか」

　文化祭の準備期間中に一度も誘われなかった快適さとその不思議さが気になっていたけれど…そういうことだったか、と理解しため息が出る。ほんと、考えてるわ、ちゃんと。私が誘われたらうざがるとこまでしっかり考えたうえでやってるわ。
　