aversion 2 (ページ13)

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　「で、なに」
京「これ」

　京本からの連絡には「きて」とだけ書いてあった。予想される教室に向かえば、私の予想は一発で的中。ドアを開けた先には真面目にノートに向き合う京本がいた。

　京本の向かいに座ったと同時に突き出されるノート。そこには京本の字でびっしりと文字が書いてあった。

京「夏休みにAから話聞いたじゃん？それを基にちょっと書いてみたんだよ」
　「はぁ…」
京「読んで」
　「読んでいいの？」
京「よくなきゃ言わないでしょ」

　もう一度ズイッと目の前に出されるノート。本人がいいって言ってるなら、とそれを受け取って読んでみる。

　話していると主語がないことが多いし、唐突だし、「どういうこと？」と聞かないと話している内容が分かんないことがあるような京本。…の、はずなのに。ノートに書いてある歌詞はスッと理解が出来て、状況とか心境に共感が出来て。素直に「すごくいい」と思った。

　「わかりやすいし、すごくいいと思う。私は好きだよ」
京「そりゃ分かりやすいだろうね。Aが元になってんだから」
　「…それもそうか」

　そうだ。自分の経験が元になっているんだった。と思い出して読み返す。そう思うとなんというか、リアルであの瞬間を思い出して胸がギュッとした。

京「いいならよかった」
　「…わざわざ読ませてくれてありがと」
京「俺のセリフね？俺にはない感覚の話だったから…うまく出せてんなら安心した」
　「抜群に出てるわ」

　ノートを返す。自分のもとに戻ってきたノートの中身をもう一度見るわけでもなく迷いなくカバンにしまう姿が京本らし過ぎた。

　「…それってさ、趣味、なんだよね？」
京「そうだけど？」
　「どこにも出してないの？今まで作った曲」

　夏休みに呼び出された日から気になっていたことを聞いてみる。作ってるってだけで「すごい」と思っていたのに、中身まですごくいいものと知った今、気になってしょうがなかった。

京「出すよ。今度」
　「ネットとか？」
京「文化祭で。軽音部でやる」
　「はい！？」
京「俺が組んでるとこでコピーのほかに、やんの」
　「マジで！？え…結構すぐじゃん。間に合うの？というか、私の失恋、ステージから歌われるわけ？」
京「そうだね。間に合わせるために今日も呼びだしたし」
　「……はっずかし」

　まさか、その曲が文化祭で歌われるなんて思ってもいなかったため、あのリアルな歌詞に急に恥ずかしさが湧いた。