aversion 2 (ページ1)

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　「…あっそ」

　浴衣じゃないのか、というのと、私服こんなんなのか、という意味のこもった視線だったのか。

　「というか、人に浴衣がどうとか言うくせに、自分も普通の服じゃん」

　やり返すように田中くんを見る。白Tにゆるいダメージジーンズ。いつも通り耳にはピアス。シンプルで、でもちょっとチャラい感じで、田中くんっぽい。

樹「Aちゃん私服だと思ったからさ。俺だけ浴衣ってのもつまんないでしょ？」
　「その感覚はわかんない」
樹「どう？俺の感じ。変じゃない？似合う？」
　「…田中くんっぽいって感じ」
樹「えー…それいい意味？」
　「しらない」

　いつも通りの余裕そうな笑みを浮かべて言うのが腹立つ。なんでこの人は無性に腹立つ感じがあるんだろう。

樹「相変わらず冷たいんだから」

　そうは言いながらも表情は変えない。私が冷たくしても全くダメージ食らわない。この感じに今からしばらく付き合わなきゃいけないのか、と思うとため息がでる。

樹「そんなため息ついてないで行こ？せっかくの夏祭りなんだから」

　誰のせいで、なんて思いながら、田中くんが話しながら差し出してきた手を見つめる。こういうことするからため息が出るんだよ。

　「私がこれを掴むと思う？」
樹「思わなかったけど、物は試し、と思って」
　「無駄な試し」
樹「あ、待ってよ」

　差し出されていた手を無視して歩き出せばすぐに後ろからついてきて隣を歩きだす。いつも通り田中くんが一方的に話すのを聞きながら、浴衣を着ている人たちについて行くように歩く。どんどんと夏祭りらしい雰囲気になってきて、次第に屋台が増えてくる。

樹「Aちゃん、屋台でなんか食べたりする？」
　「まぁ」
樹「どういうの好きなの？」
　「甘いやつ」
樹「焼きそばとかタコ焼きとかは？」
　「当たり外れあるじゃん。」
樹「あー、あるある。タコ入ってない、とかね」
　「そう。だから買わない」

　にぎやかで明るい屋台を見回す。かき氷、チョコバナナ、りんご飴…。自分好みの屋台を探す。

樹「本当に夏祭り好きなんだね。目がキラキラしてる」
　「…まぁ、好き、だけど。好きなんて教えてないよね？誰かから聞いた？」
樹「きょも。イベントごと好きだから夏祭りも好きだったはずって」
　「あいつ…」

　余計なこと教えやがって。思い返せばあの日、京本に呼び出されなければこうやって夏祭りに田中くんと来ることにもならなかったはず。