シノアな真昼とSERVAMP (ページ2)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:2,715 hit

紅い目覚めⅰ ページ2

気が付いた時に見たのは、酷く赤い液体だった。

それがばしゃりと全身にかかる。

次に目に入ったのは、首から勢いよく血を吹き出した女性。恐らく頸動脈を傷つけられている。あれは、普通なら致命傷だ。

それと、口元を真っ赤に染めた、牙の生えた男。たぶん吸血鬼だろう。その男が、女性をコンクリートの地面に無造作に捨てる。ドサリと重い音がした。

「⋯⋯⋯」

周りを見る。薄暗い、路地裏。自分の後ろに二人、正面に一人男がいる。特徴を見るに、全員吸血鬼だろう。

「おいおい殺しちまったのか？」

「まあいいだろ⋯⋯メインはこの餓鬼だ」

「分かってるよ匂いが格段に違ぇ⋯いやしっかしすげえなこれ」

「それにしてもついてるなア⋯これ一匹飼えば俺たち三人⋯いや十人だったとしても数十年はもつぞ！」

襟をつかまれ、持ち上げられる。

⋯⋯どういう意味だろう。私の血を吸うために飼うのか？いやそれでも十人は無理だろう。
一人にだって、吸い尽くされてしまうのに。

段々と記憶がはっきりする。意識がはっきりする。自分のことが分かってくる。

私の名前は、柊シノア、だった。

ただ、どうやら私は、生まれ変わってしまった、らしい。理由もきっかけも、今はまだ、思い出せないのだが。いや、そもそもこの原因の記憶が、自分の中にあるのかも分からない。

今の名前は、城田真昼。あの姉と同じ名前。小学四年生の少女。父に関する記憶はほとんど⋯いや、かけらもない。母は⋯とても、優しい人だった。

現に今だって、こんな私と一緒に逃げてくれて。

「しーちゃん」

自分の中に棲みつく鬼を呼ぶ。酷く厄介な鬼を呼ぶ。すぐに右手に鎌が生まれる。大人の背丈を遥かに超えた、人が持つには大きすぎる、呪われた漆黒の鎌。

吸血鬼たちがこちらを見て

「⋯あ？」

と言って、だが、彼らが反応できたのはそこまでだった。