10輪 ページ17
松下村塾での生活は、今までより一層濃いものだった
初日の剣道で晋助と銀時に目を付けられ、試合で倒してしまったことから毎日決闘を申し込まれる始末
2人ともプライドが強いのか、何度も申し込むものだからかなり疲れた
他にも、何故か握り飯を強要してくる小太郎や、俺を好奇の目で見てくる周りの子供
その一人一人が個性的で、一緒に過ごすことに飽きは感じられなかった
時には喧嘩もしたけれど、毎日笑って、楽しく過ごした
一度、夜中に無断で外に出たことがあった
両親のことを思い出したせいかもしれない
人は死んだら星になると前に母が言っていたのを思い出して、闇夜に散りばめられた星々を見て、どれが両親だろうか、などと考えていた
1時間か、2時間かが経ち、そろそろ戻ろうかと腰をあげたとき、背後から声がした
松「こんなところにいましたか」
振り向けば、いつもと変わらぬ笑みを浮かべた松陽がそこにいた
松「何をしていたんですか?」
「…少し、物思いに耽っていた」
松「そうでしたか」
そう言って松陽は、俺の隣に並んだ
松「…身寄りがいないのは、辛いですか?」
いきなり、そう聞かれた
「…まぁ、多少は」
今でも鮮明に覚えている母の最期
家を出たあとに立ち寄った町々で、親子連れを見たときに抱えた複雑な感情
羨ましい
妬ましい
悲しい
許せない
何故、自分の両親は殺されたのか
幕府への抑え切れない復讐心が、ぐちゃぐちゃに絡まった感情の糸が、心を支配した
「…何故人は、人を殺すんだろうな」
その呟きに、松陽がピクリと反応した
松「…それはまた、難しい問いですね」
別に、答えが知りたいというわけではない
人によって答えは違うと思うし、知ったからといって、どうなるというわけでもないだろう
ただ、その行き場のない問いが、ずっと心の中にあった
「…なんでもない、戻ろう」
そう言って踵を返し、歩き出した
その後ろ姿を、松陽が複雑な眼差しで見つめていたことを、俺は知らなかった
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たじま太郎(プロフ) - 燐さん» http://uranai.nosv.org/u.php/novel/totetumona1/ パスは下の名前だけ! (2018年7月14日 17時) (レス) id: cf213f116d (このIDを非表示/違反報告)
たじま太郎(プロフ) - 燐さん» おけまる (2018年7月14日 17時) (レス) id: cf213f116d (このIDを非表示/違反報告)
燐(プロフ) - たじま太郎さん» ...お願いしてもよろしいか? (2018年7月14日 7時) (レス) id: 33ba259d9b (このIDを非表示/違反報告)
たじま太郎(プロフ) - 燐さん» せやな!どっちつくる? (2018年7月14日 1時) (レス) id: cf213f116d (このIDを非表示/違反報告)
燐(プロフ) - たじま太郎さん» だっ大丈夫だよ!!!!覚えてるよ!さ、ちゃっちゃとやんないと運営さんから注意されちゃうよ!!!! (2018年7月13日 23時) (レス) id: 33ba259d9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:燐 | 作成日時:2018年3月19日 9時