Your side.「勝て」 ページ18
「時代錯誤の原理主義だ。飯田、人殺しの理屈に耳貸すな」
「いや、言う通りさ。僕にヒーローを名乗る資格などない……それでも、折れるわけにはいかない。俺が折れればインゲニウムは死んでしまう」
「論外」
倒れているヒーローが逃げろと言うが、正直この場面で逃げられるわけがない。
姉さんの言葉を借りると「こいつ無能？」だ。自分達と相手の力量を測れないほど私たちはお子様じゃない。
ましてや、相手の執着具合。逃げたら絶対追ってくるし、背中を見せるなんてできるわけない。
そしたら心臓をぐさりでゲームオーバーだ。
「轟くん、温度の調節は可能なのか！？」
「炎熱はまだ慣れねえ、何でだ！？」
「俺の脚を凍らせてくれ、排気筒は防がずにな」
「だったら私の液体窒素が早い。ちょっと痛いけど我慢して」
片手間に保っておいた液体窒素をうまく纏わせて脚を冷やす。その間に2本ナイフが兄さんに飛んできたが、飯田君が右手で庇った。
「飯……」
「良いから早く！」
(2回。ここからここから跳んで氷を踏み台に、2回行けるか……？いや、今は)
……液体窒素はあと試験管1本分残ってる。あと、あまり使いたくないけど水素もある。
兄さんの火があるなら水素爆発を狙って目眩しくらいはいけるだろう。
飯田君からのお礼を受け取って、ポーチに手をかけた。
(戦うんだ、腕など捨てておけ)
(今は……)
(今は……)
(脚が)
(拳が)
((あればいい！))
私の判断よりも早く、彼らはヒーロー殺しの動きを緩めた。
チャンスだ。
試験管を叩き割って見えない水素をヒーロー殺しの前に持っていく。
「おまえを倒そう！今度は……！犯罪者として——」
「たたみかけろ！」
「ヒーローとして！」
飯田君の蹴りと、兄さんの炎、そしてそれに反応して爆発した私の水素。ヒーロー殺しにダメージを確実に与えられた。思ってたよりも上手くいった気がする。
兄さんが叫ぶ
「立て！まだやつは……」
シュウ、と燃え終わる音がすると氷山が見えて来る。
「……終わったよ、兄さん。私たちの勝ちだ」
Your side.「終わり……？」→←Your side.「理性」
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