故に孤悲 ページ27
拳を叩きつけているのだろう。
分厚いドアを叩く激しいノックの音が聞こえる。
おい！聞こえているのか！？
呼びかけはきっと、私に宛てて。
…やめてほしい。大事にしないでくれ。
せっかく本をゆっくり読む最後の機会。
ドアを封鎖して何が悪いのか。
施錠すれば口煩い母も来ない。
私でない完璧な嫁を求む父も来ない。
私をマナーで縛る使用人も来ない。
まぁ、あなたは好きな方だったかもしれない。
ただの小娘を好いてくれたあなたは、
まだ好きだったかもしれない。
色褪せてしまった何もかもを以っても、もう分かったことではないが。
ドンドンドン
頼む！開けてくれ！
嗚呼、騒がしい。
きっと扉の奥には、必死な形相のあなた。
そこまでして欲しいのは私？それとも誰でも良い《妻》なのか？
今になってはどちらでも良い。心底良いけど、最後に聞いてみたかった。
でも、仮にあなたが私をいくら愛していても。
多分私はあなたには堕ちなかったと、
それだけ。
…さようなら、さようなら。
ガタン、と立て付けの悪い古い窓を開く。
はて、そういえば遠い友人は
宙に飛ぶことが夢であったか。
何時ぞやに、死んだ者は星となって地を見守るのだと。
そう祖母に教えられた事があったか。
…空想だ。現実を知れば分かる、夢物語にも等しい話。
でも、でも、そうだ。
祓い手として見てきた魑魅魍魎が幻と伝えられるこの世ならば。
あるはずのない物が真実ある物であったと解明され続けるこの世ならば。
足が浮く。
奇妙な浮遊感が体にまとわりつく。
…鳥のように穴のある骨ならば、飛べただろうか。
沈み行く体。
遠く離れる澄んだ空。
窓辺の椿が、音を立てて落ちた。
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さくら(プロフ) - 月ヶ瀬@猫さん» 秀麗だなんてそんなとんでもない…ありがとうございます！今後も頑張っていきますので、今作をどうぞよろしくお願いします！ (2020年2月28日 7時) (
レス) id: f3613561c3 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬@猫 - さくらさん» すごく秀麗な文章に圧倒されました……もう私語彙力無さすぎ……これからも更新頑張って下さい！ (2020年2月28日 0時) (レス) id: 579741ae87 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - さくらみるくさん» いえいえお気になさらず！美しいだなんてもったいないお言葉ありがとうございます！冒頭の日常を切り取った文章はまさに『美しい』を目指して書いていたので、そう言っていただけると嬉しいです！そのお言葉で明日からも更新頑張ります (2020年2月26日 21時) (レス) id: f3613561c3 (このIDを非表示/違反報告)
さくらみるく - 夜分遅くにすみません、さくらみるくです!!もう毎度のごとく美しい文章...そして可愛い夢主ちゃん...全てが私の好みです...。これからも応援してます！更新頑張って下さい〜！ (2020年2月26日 21時) (レス) id: babdecb30b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さくら x他1人 | 作成日時：2020年2月11日 22時
