少女は月明かりの旋律を紡げるか 4 ページ4
それはいつも通り、一仕事終えた帰りの事。
「今日もハズレか……ま、そんな簡単に見つかる訳はねーか」
グライダーで空を飛び、眼下の夜景を見つつぽつりと呟く。
夜はまだまだ肌寒い。冷えた空気が髪を攫うのにちらりと靡く髪を見ては、さっさと帰って温まるに限る、と思ったところでふと何かが聞こえた。
「ん？何だ……？」
びゅうびゅうと風を切る音に混じって、僅かに何かが聞こえたような気がして耳を澄ますが、よく聞き取れない。気のせいか、とも思ったがなんとなく気になり近くの建物の屋上へ一度降り立った。再度耳を澄ます。
「………歌？」
風の音がなくなった事で先程より鮮明に聞こえたそれが歌であるとわかると、どこから聞こえるのかと周辺へ視線を流す。やがて少し先のマンションの屋上に人影を見つけ、聞こえる方向からその人影が歌っているのだろうと確信すれば何故か躊躇うこともなくその人影の元へ降り立った。
歌っている途中で感じた気配に相手は驚いたのか後ずさる。それはそうだろう、いきなり空が降りてくるなど普通思わないだろうから。安心させるように声をかける。
「──ああ、すみません。驚かせるつもりはなかったのですが……美しい旋律に惹かれてしまいました」
その瞬間に吹いた一筋の強い風が自分と相手の姿を照らした。風に靡く長い髪、月明かりに照らされ不思議な色合いを湛えた瞳は驚きに見開かれている。内心自分も同じように驚き一瞬だけ目を見開いたがそれはすぐに隠す。きっと相手は気付いていない。それを確信して笑みを深めれば恭しくこうべを垂れた。
「貴女の歌に癒しを求めて降り立ったしがない怪盗です。さあそのまま……この疲れ果てた哀れな怪盗に癒しの歌を、歌って頂けませんか？」
───────────
この時は本当になんとなくだった。月夜の魔法、とでも表現すればいいだろうか。
まるで魔法にかかったかのように、聞いてみたい、と思うままに降り立ったのだ。
まさかそこで歌うのが彼女だとは思いもしなかったが。
その後慌てながらも歌ってくれた彼女の歌を聴いて満足し、カードを残しその場を静かに去った。
『今宵の』というメッセージには、また聴きに行きその日その日の歌声を頂く、という隠しメッセージを込めて。
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さくら(プロフ) - 雪村セツカさん» 雪村さん初めまして！表現褒めて頂けて嬉しいです……！！のんびり更新していきますので、お時間ある時にまた覗いてやって下さいませ！ (2019年5月29日 23時) (
レス) id: 6161016a7e (このIDを非表示/違反報告)
雪村セツカ - 凄い表現の小説です！この後もとても楽しみです！ (2019年5月29日 21時) (レス) id: d20236ed14 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 彩奈@Project KZさん» 彩奈さん初めまして！わあ、ありがとうございます……！お暇な時にゆるりとまた見て下さると嬉しいです☆ (2019年5月29日 7時) (レス) id: 671013a88c (このIDを非表示/違反報告)
彩奈@Project KZ(プロフ) - すごく面白かったです！引き込まれました！！今後の展開が楽しみです！ (2019年5月29日 7時) (レス) id: 31fa4da9ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さくら | 作成日時：2019年5月24日 8時
