少女は月明かりの旋律を紡げるか 第１部【怪盗キッド】

少女は月明かりの旋律を紡げるか 14 ページ14

「おい青子、お前こんなとこで何やってんだ？」
あまりに真剣に次々と雑貨を手に取っては凝視している青子に少々たじろぎつつ声をかける。すると目を丸くして青子がこちらを見た。
「快斗！？快斗こそこんなところで何やってるの！？」
「お前がすんげー面して走ってここに入るのが見えたんだよ、ったく……そんな変な面人様に晒したら迷惑だろうが」
凄い形相だったぞとジト目で言ってやれば、何よー！とすぐに反論が返ってきた。
「青子は今真剣なの！！！Aちゃんをすぐにでも癒せるものを探さなきゃならないんだから！！」
幼馴染から出た彼女の名前に一瞬だけ眉を跳ねさせたが、何事もなかったかのように会話を続ける。
「すぐにでも癒せるものってお前……雑貨でそりゃ無理あるだろ。なんでそんなもの探してんだよ」
そう言うと泣きそうな表情でこちらを青子が見た。ぎょっとして見返していると、雑貨を持つ青子の手に力が入る。
「だって……！嫌だもん、Aちゃんの歌、聞けなくなるの！」





「歌が聞けない？……前に青子が言ってた知り合いの話か？」
「そう！Aちゃん。……何かあったみたいで、声は出て話も出来るのに歌えなくなったって。コンクールも近いのに……辛い事思い出させそうだったから詳しい話は聞けてないけど、このままじゃ困るから」
マジックを披露して以降そういえば暫く会っていなかった。その間に何かあったのかと思案を巡らせる。情報収集してみる必要がありそうだと思いながら、だから心を癒せるものをたくさん側に置いてみようと思ってと呟く青子に思わず溜息をついた。
「お前なあ……気持ちはわからねーでもねーが……」
「快斗の言いたい事はわかってるよ、Aちゃんだって時間が解決するのを待つしかないって言ってた。でも、青子がAちゃんの為に出来る事って本当にこれぐらいしかないんだもん」




──────────




「んー……確かこっちに走って行ったと思うんだけどなあ……」
とりあえず会計を済ませ、私は青子ちゃんが走って行った方向へ歩いていた。癒されるようなものをたくさん見つける、と言っていたので多分癒しグッズが置いてそうな店にいそうなものだと勝手に目星をつけて店を覗いていく。すると、何軒目かで青子ちゃんの声が聞こえ、ここかと足を踏み入れた。奥へと進んだ瞬間に聞こえた青子ちゃんの言葉に思わず足を止めくすりと笑ってしまう。


「──そんな事ないよ、青子ちゃん」

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