少女は月明かりの旋律を紡げるか 11 ページ11
ホッとしたのも束の間だった。賞賛を一刀両断する冷ややかな声音に振り返る。
横で園子が「うげっ……出た……」と心底嫌そうに呟いた。
「……お祖母様」
落ち着いたシャンパンブラウンのドレスに、アップにした白髪。冷ややかな視線をこちらへ向けて、そこに祖母は立っていた。
────────
「なんですかあれは。そういう風にレッスンを積めと言った覚えはありません。全く……永月家で過ごしていないからと何か勘違いをしているようね」
「お、奥様!なんでそんな事を……A様、申し訳ありません、お久しぶりでございます」
眉をこれでもかと寄せこちらを睨む祖母と、それを慌てて嗜める執事の明星。申し訳なさそうにこちらを見る明星には緩く首を振る。
「うん、久しぶりね明星さん。なんていうか……こちらこそごめんなさい」
「明星、黙っていなさい。……こんなに凛より劣化されては困るわ。貴女は次期当主なのに本当にお遊びで歌っているようね」
その言葉に周囲がざわつき始める。そこに最初に食ってかかるのは勿論園子だ。
「ちょっと!!!黙って聴いていれば……!Aの歌の何処が駄目なのよ!!!大体、Aに歌って貰いたいって思ったおじ様にも失礼だわ。っていうかそもそも孫にかける言葉じゃないでしょ!!」
「そ、園子!落ち着いて!……でも、私もAの歌は素敵だと思います。ここにいる皆さん同じ気持ちです」
園子を窘めながら蘭もそう言ってくれる。周りも頷いてくれていて、祖母の横では明星も大きく何度も頷いていた。それが益々気に食わないのか祖母の顔は険しくなっていく一方だ。
「素晴らしさ?そんなものはどうでもいいのです。永月家の当主として引き継ぐに相応しい歌だけ歌っていれば。相応しい歌い方でね。そんな酷い歌しか歌えないなら歌うのも辞めなさい、耳障りにも程がある。あの時凛でなく、貴女が死んでいれば──」
「奥様!!!!!」
あまりの言葉に流石の私も目を見張ったが──何かを言う前に一際大きく明星の声が響いた。それに大きく祖母は溜息をつき踵を返し広間を出て行った。明星がこちらへ駆け寄る。
「A様!本当に申し訳ありません、誤解なのです、奥様も決してあんなことは思っていないのです、どうか」
「明星さん、大丈夫。大丈夫だから。お祖母様をよろしくね」
泣きそうな明星にそう言うと、先程の歌素晴らしゅうございました、と小さく私に告げて頭を下げ、祖母を追って広間を出て行った。
少女は月明かりの旋律を紡げるか 12→←少女は月明かりの旋律を紡げるか 10
114人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
次はさせて下さい 3 【降谷零/安室透/怪盗キッド】
怪盗、歌姫、ミュージカル【怪盗キッド/黒羽快斗】
もっと見る
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さくら(プロフ) - 雪村セツカさん» 雪村さん初めまして!表現褒めて頂けて嬉しいです……!!のんびり更新していきますので、お時間ある時にまた覗いてやって下さいませ! (2019年5月29日 23時) (レス) id: 6161016a7e (このIDを非表示/違反報告)
雪村セツカ - 凄い表現の小説です!この後もとても楽しみです! (2019年5月29日 21時) (レス) id: d20236ed14 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 彩奈@Project KZさん» 彩奈さん初めまして!わあ、ありがとうございます……!お暇な時にゆるりとまた見て下さると嬉しいです☆ (2019年5月29日 7時) (レス) id: 671013a88c (このIDを非表示/違反報告)
彩奈@Project KZ(プロフ) - すごく面白かったです!引き込まれました!!今後の展開が楽しみです! (2019年5月29日 7時) (レス) id: 31fa4da9ec (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さくら | 作成日時:2019年5月24日 8時