【銀魂】君と共に生きる春 6【坂田銀時】

躍り出るの結論 ページ39

銀時side


ウィィィンと掃除機から発せられる機械音が静かな万事屋の室内を満たしていた。新八は黙々と掃除機をかけて神楽は掃除機で音を遮られつつテレビを見ていて、俺も社長椅子に座って同じようにほとんど何も聞こえないテレビを見ていた。画面には昼間のバラエティー番組が放送されていて、何やら女性タレント達がファッションの対決をしているらしかった。色とりどりの字幕で内容はなんとなく把握できるものの、神楽がうるせェなと不満げにテレビのリモコンを手にするなり音量を上げていった。掃除機の音を貫くようにテレビの音が聞こえてくる。

司会の男性タレントの喋りにスタジオ内では笑いが巻き起こっており、神楽もそれがおかしかったのか楽しそうに笑っている。けれど、俺は何が面白かったのか分からなかった。視線はテレビ画面に向いているものの内容が頭に入ってきていなかった。俺はただボーッとするように次々と移り変わる画面を眺めてたいるだけだった。


「あ！神楽ちゃんってば、またこんなところに靴下脱ぎっぱなし！ちゃんと洗濯に出してって何回言っても直らないんだから！」

「あ〜それ今日も履こうと思ってたのに〜」

「嘘つけ！」


まったくもう、と文句を垂れながら新八は脱ぎ捨てられた靴下を洗濯かごに持っていった。

そんないつも通りの万事屋。いつもと何ら変わりはない午後1時。そろそろ半を回ろうとしているらしかった。けれど俺は何処か上の空で、きっとそれは二人にも伝わってしまっていることだろう。俺の様子がおかしいということは、とっくに二人は気付いているのだろう。掃除機をかけながら、テレビを見ながら、俺のことを気にするようにたまに視線を向けてきていることに俺は気付いていた。


あの日から、Aに会っていない。病院の周辺に足を向けてもいなかった。

Aを江戸の町に連れ出した日から数日。その間、俺は何度も何度も彼女が口にした言葉を思い出していた。繰り返し繰り返し、その度に視界が揺らぐような、足場が崩れていくような感覚に襲われながら、それでも思い出し、そしてその意味を考え続けた。辞書すら引いてみようかと思ったほどだ。

けれど、どう考えたって、何度考えたって、その言葉はその言葉の通りの意味で、比喩だとかそんなものではなくて、いつだって同じ結論が俺の頭に躍り出るのだ。


『彼女は死ぬのだ』と。


けれどどうしても受け入れられなくて、信じることが出来なくて、俺はその結論を否定するための根拠を見つけるためにまた同じことを考えるのだ。

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