【銀魂】君と共に生きる春 6【坂田銀時】

そう遠くないうちに ページ35

『……Aさんの抱えた病は、以前お話しした通り原因が解明されていません。薬で症状の進行を送らせたり、発作を沈ませたりということで、今までやってきましたが……』


私は先生がこれから先に続ける言葉を、容易く予想することができた。自分でも、なんとなく分かってはいた。ここ最近の身体の異変で、分からないはずもなかった。きっと、両親だってそのことを分かっているはずだ。分かっているはずなのに、こんなことを尋ねてしまうのは、自分達で受け入れるのには、あまりにも大きく、重たく、苦しいものだからだろう。

私の少し後ろの位置に両親は座っているので表情は見ることが出来ないけれど、きっと、泣き出しそうな顔をしているのだろうと思う。そんな気配が、背中にひしひしと伝わってきて、自分の心臓がどうなってるのかとか、これから私がどうなるのかとか、そんなことよりもそれが悲しくて、早くこんな時間が終わればいいと思った。

先生は意を決したように。言いたくもないことを口にするように、低い声で、けれど医師らしく気丈にしていなければという決意を感じるような声で続けた。それは、私がとっくに理解している言葉をそのまま復唱しているようだった。


『……Aさんの心臓の昨日は著しく低下しており……これまでの治療では、通用しないことも、増えてくると思います』

『そんな…』


お父さんの声が聞こえた。この世界の理不尽すべてに失望しているような深刻な声だった。お母さんからはすすり泣くような音が聞こえてきて、その声や音に、私の胸はいちいち痛みを帯びていった。真っ赤な血液型その傷から流れ出ているような気がした。

まぁ、今の私の血はもう赤くなんてないかもしれないけれど。心臓が上手く働かないのであれば、酸素を含んだ血液を身体にちゃんと送り出せないのだから。


『先生、このままの状態を継続していくとして、どれくらい持ちますか』


早く。早くこの時間を終わらせてしまいたくて、私はそう問い掛けた。どんなに粘ったって先生から告げられることは変わらないのたから、急かそうが焦らそうがどっちだっていい。

もう、随分と前からこうなることは分かっていたから、今更何を思えばいいのか、例えば悲しめばいいのか、怖いと泣けばいいのか。それすらも、私には分からなくなっていた。


分かっているのは、ただひとつだけだ。


『…このままでは』


先生が真っ直ぐにこちらを見据え、言った。


『春樹さん、貴女は、来年の春まで、持つか持たないか…』



私は、そう遠くないうちに死ぬ。

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