バカ ページ34
…自分でも、恥ずかしいことを言ってるなと思う。多分このあと私は、自分が今言った台詞がだんだんこっ恥ずかしくなってきてきっと悶え苦しむことになるんだろうけれど、今はそんなことどうでもいい。
……今は、私の言葉が少しでも銀ちゃんの何かになってくれたらいい。銀ちゃんの抱えるものを軽くしてあげられたら、楽にさせてあげられたら、
ー・・・銀ちゃんに届いてくれれば、それでいい。
漸く収まってきた涙。きっと今の私の顔は酷いもんになっているんだろうな。そんなことを頭の片隅で思っていれば、
銀「……カだろ」
「…ん?何?」
ポツリ、銀ちゃんは小さな声で何かを呟いた。あまりにも小さい声だったため聞こえなかったので私は聞き返した。のだが。
銀「……バカだろお前」
「…は……、」
はああああ!?という叫び声が和室に響いた。
今コイツなんつった!?バカとか言いやがったよね今!!バカって!!なんなのコイツデリカシーってもんがないの!?さっきまでの感動のシーンみたいなのは何だったの!?
「あ、アンタね…!!」
銀「バカだよお前。…ホントに」
「だからそのバカってやめなさ…」
そのバカってやめなさいよ。そう言おうとした。そう言ってもう一週間くらい口聞いてやらないつもりでいた。
なのに。
銀ちゃんは私の手を引いて、私を自身の腕の中に収めた。突然前触れもなく背中にまで回ったぬくもりは、紛れもなく銀ちゃんのもの。
いきなりすぎて私は「うああ!?」という色気もクソもない声をあげ、目をパチクリとさせる。が、
「…!」
背中に回された銀ちゃんの手が、小さく微かに、震えているのに気がついた。多分、それを押さえたいんだろうけど、押さえきれないそれが私に伝わって。
……銀ちゃんは、私なんかよりもずっとずっと強い。そう思っていた。私なんかよりも強くて、一人でなんだってできて、皆のことを引っ張っていけるような。そんな強い人なんだと。
でも、それは少し違うのかもしれない。銀ちゃんが強いことに変わりはないけれど、きっと銀ちゃんも、私と同じで。
……寂しいとか、苦しいとか、そういうことをうまく伝えられなくて、全部押さえ込んで我慢して、閉じ込めてしまう。その気持ちは、私には分かる。
だから。
「…銀ちゃんだってバカじゃない」
私も、銀ちゃんを救う何かになりたい。銀ちゃんが私に、してくれたように。
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ピピコ(プロフ) - 悠さん!『忘れねぇよ』に続きこちらでもコメントありがとうございます!この作品はギャグもシリアスもお楽しみ頂けるものにしているつもりなので、そう言って頂けると嬉しいです!長ったらしく続いておりますが、引き続きお楽しみ頂けたら幸いです! (2017年8月9日 18時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
悠 - とても面白かったです!特にギャグの部分が好きです。トリップの話は今回初めて読みましたが、感動しました!これからも、頑張ってください!応援しています!ピピコ様の書く小説大好きです! (2017年8月9日 16時) (レス) id: 7d25b2e8fd (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - オロナミンCさん» そんなに誉めて頂けるとは…!!感激です!ギャグとシリアス、どちらも楽しんで頂けているなら幸いです!!これからも笑いあり涙ありを目指して頑張らせて頂きますので、少しでも楽しんで貰えたら嬉しいです!ありがとうございました!! (2017年7月29日 18時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
オロナミンC - ギャグもシリアスもちょうどいいぐらいにあってとても読みやすく面白く感動します。楽しく読ませていただきました。 (2017年7月29日 17時) (レス) id: e86c711444 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - いちごみるくさん» 本当ですか!?そう言って頂けて嬉しい限りです!これから少しずつ物語が動いてくるので感動できるものを書けるように頑張ります!ありがとうございます!! (2017年5月3日 15時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年4月19日 11時