嘘つき ページ31
私は、銀ちゃんが抱える何かを知ることから、銀ちゃんは、私には何かは分からないけど、銀ちゃんの抱える何かから。中身は分からないけどそう思えるのだ。それはきっと私もずっと逃げていたから。
自分の気持ちと向き合うことから。本当の自分から。自分の気持ちを嘘で固めて平気なフリをして、ずっとずっと逃げていた。でも、
…銀ちゃん達と出会って、変われたんだ。銀ちゃんに出会って、私は本当の私を見つけつつある。本当の気持ちと向き合えるようになってきた。
…もう逃げないと、固く強く決めた。少しでも強くなりたいと思えた。
だから、このまま曖昧なまま、うやむやなままで目を逸らしちゃいけない気がした。別に銀ちゃんの昔のことを掘り返すつもりはもうない。言いたくないなら言わなくていい。でも、伝えられることは伝えないと、いけない気がするのだ。
銀「くああ〜…俺も眠みぃし、そろそろ寝るかな」
と、社長椅子にふんぞり返りながらジャンプを読んでいた銀ちゃんが大きな欠伸をしながら立ち上がった。どうやらもう眠ってしまうつもりらしい。
それに倣うように私も寝室へと足を向ける。
和室の畳の上に乱雑に銀ちゃんは布団をひき始める。その隣に私も布団をひきながら、「銀ちゃん」とソイツの名前を呼ぶ。
「あ?」といつものように気だるそうに返事をした銀ちゃんに、私は言葉を探す。こういう時に限ってうまく言葉が出てこないから厄介だ。しっかりしろ私。伝えられることは伝えないと、…手遅れになることだってあるんだから。
「あのね」
…無くしてからあれを言えばよかっただとか、後悔したって遅いんだ。それを私は、よく知っているはずだ。
「…さっき…」
銀「悪かったな」
私が漸く口を開いた瞬間、銀ちゃんはそれを遮るように言葉を放った。それは謝罪の言葉だった。それに私は布団から目線を銀ちゃんに向ける。
銀「…気、使わせてるよな。いーよお前は謝らなくて」
ヘラリとおちゃらけて笑う銀ちゃんは何処までもいつも通りで、だからこそなんでか、すごく苦しそうに見えた。
銀「変なこと言っちまったしな。別にお前は何も悪くねーよ。だからもう気にすんな」
…違う。
私は、銀ちゃんにそんなことを言わせたい訳じゃない。私だって気を使わせたい訳じゃない。
銀「忘れろ今日言ったことは。何でもねーからよ」
違うでしょ。そんなこと言いたい訳じゃないでしょ。嘘つき。
銀「だからもう…」
「…さい」
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ピピコ(プロフ) - 悠さん!『忘れねぇよ』に続きこちらでもコメントありがとうございます!この作品はギャグもシリアスもお楽しみ頂けるものにしているつもりなので、そう言って頂けると嬉しいです!長ったらしく続いておりますが、引き続きお楽しみ頂けたら幸いです! (2017年8月9日 18時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
悠 - とても面白かったです!特にギャグの部分が好きです。トリップの話は今回初めて読みましたが、感動しました!これからも、頑張ってください!応援しています!ピピコ様の書く小説大好きです! (2017年8月9日 16時) (レス) id: 7d25b2e8fd (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - オロナミンCさん» そんなに誉めて頂けるとは…!!感激です!ギャグとシリアス、どちらも楽しんで頂けているなら幸いです!!これからも笑いあり涙ありを目指して頑張らせて頂きますので、少しでも楽しんで貰えたら嬉しいです!ありがとうございました!! (2017年7月29日 18時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
オロナミンC - ギャグもシリアスもちょうどいいぐらいにあってとても読みやすく面白く感動します。楽しく読ませていただきました。 (2017年7月29日 17時) (レス) id: e86c711444 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - いちごみるくさん» 本当ですか!?そう言って頂けて嬉しい限りです!これから少しずつ物語が動いてくるので感動できるものを書けるように頑張ります!ありがとうございます!! (2017年5月3日 15時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年4月19日 11時